佐藤優の読書ノート「独裁者のためのハンドブック」ほか

読書ノート No.85

ブルース・ブエノ・デ・メスキータ/アラスター・スミス(四本健二/浅野
宣之訳)『
独裁者のためのハンドブック』亜紀書房、2013年11月

「独裁者のためのハンドブック」というタイトル自体が反語法である。独裁と対極にある米国、西欧などの民主主義国においても、少し形を変えただけで「独裁の技法」が用いられているという著者たちの見方は正しい。

レーニンのブルジョア民主主義観を現代的に翻訳したと見ることもできよう。著者たちは、具体的に5つの技法を提示する。

<どんなシステムでも、成功するためにリーダーが使える五つの基本的ルールを、政治的生き残りを賭けた支配についての考察から導き出した。

・ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
小さな盟友集団は、リーダーが権力を維持するのに、少人数の人々にしか頼まないことを意味する。必要不可欠な者が少なければ少ないほど、歳出は管理しやすく、自由に使える裁量が増すことになる。

小さな盟友集団を頼みとすることにかけては、現代の巨匠である北朝鮮の金正日将軍に、万歳!(…以下略)

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・C.マラパルテ『クーデターの技術』イザラ書房、1971年
・新明正道『ファッシズムの社会観』岩波書店、1936年
・向坂逸郎『プロレタリアート独裁』社会主義協会出版局、1977年

読書ノート No.86

松田美智子『サムライ 評伝 三船敏郎』文藝春秋、2014年1月

三船敏郎の本格的評伝だ。松田美智子氏の作品を読んだのは初めてだが(『文藝春秋』に掲載された本書の一部については、掲載時に読んだ)、実に文章がじょうずだ。また、構成もよくこなれている。模範的な第三者ノンフィクションと思う。(…略…)

人間ドラマとしては、三船と黒澤明の関係が興味深い。

<黒澤作品に出演中、三船がなんどか酔って暴れたことを、監督はどう思っていたのだろうか。

「三船さんが暴れている姿は、なんとなく覚えています。でも、三船さんは、いくら酔っても、父の前で暴れたことがなかった。家の周りを車で走るとか、塀を殴るとか、そのくらいで、父も気にはしていませんでした。三船さんは、あれだけ注目を集めて、世間の目に晒されていたら、それなりに辛いだろうから、少々のことはいいんじゃないですか。父の方が、いくら飲んでも崩れませんでした。いつもと変わりなかったですね」

酒量が多いと暴れる三船と、いくら飲んでも変化がない黒澤は実に対照的だが、久雄は酔っ払いを大勢見てきたせいか、酒が嫌いで口にしないという。

「父は、三船さんのことを、猛獣みたいだと言ってました。三船さんと仕事をするのは、猛獣使いになったような気分だと、話してましたね」(…以下略)

2人の関係については、以下の黒澤の証言が説得力がある。

<数々の名作を生み出してきた黒澤・三船の黄金コンビだが、昭和四十年の『赤ひげ』を最後にして、二度と仕事を共にすることはなかった。そのため、監督と三船との関係になにか問題が起きたのではないか、という不仲説がいまも流れている。(…略)

黒澤本人は、マスコミから不仲説について聞かれるたびに「別に三船君と喧嘩したわけじゃありませんよ。ただ、三船君とやれることは全部やってしまったので、もう、やれることがないんですよ」と答えている。>(148頁)

仕事のパートナーとの関係では、「やれることは全部やってしまったので、もう、やれることがない」という状況が必ず訪れる。そのときに上手に関係を疎遠にするのもプロの技法だ。

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・田草川弘『黒澤明vs.ハリウッド――「トラ・トラ・トラ!」その謎のすべて』文春文庫、2010年
・春日太一『仲代達也が語る日本映画黄金時代』PHP新書、2013年
・笠原和夫『映画はやくざなり』新潮社、2003年

■読書ノート No.87

「池田大作とその時代」編纂委員会
民衆こそ王者 池田大作とその時代I「人間革命の奔流」篇』潮出版社、2011年

自民党沖縄県連が、米海兵隊普天間飛行場の移設問題に関して、従来の沖縄県外から「辺野古を含むすべての可能性を排除しない」に転換し、事実上の辺野古容認(その容認度については個人差が大きい)に転じた。沖縄関係自民党国会議員で、沖縄県外の公約を堅持しているのは國場幸之助衆議院議員だけになった。そのような状況であるにもかかわらず、公明党沖縄県本部は、沖縄県外移設を断固貫いている。

1月19日の名護市長選挙においても公明党の動向が鍵を握る。ここで重要なのは、公明党の支持団体である創価学会の池田大作名誉会長の沖縄観だ。本書を読むと池田氏にとって沖縄が特別の意味を持っていることがわかる。(…以下略)

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・ハーヴィー・コックス(野村耕三/武邦保訳)『民衆宗教の時代――キリスト教神学の今日的展開』新教出版社、1978年
・ハービー・コックス/池田大作『二十一世紀の平和と宗教を語る』潮出版社、2008年
・池田大作『池田大作 名言100選』中央公論新社、2010年

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