佐藤優のインテリジェンスレポート「金正恩の『新年の辞』」、「ロシア外務省の対日政策転換」
【はじめに】
新年あけましておめでとうございます。本年もよろしく御指導、御鞭撻のほどお願い申し上げます。
私は暮れも正月も仕事部屋に籠もって、主に単行本(3冊)のゲラチェックと序文、後書きを書いていました。これで3月までに少なくとも5冊の単行本が出ます。

今号では、金正恩の「新年の辞」の分析に時間がかかりました。分析メモの場合、要点だけを文字にまとめることが求められます。他方、「新年の辞」は、実によくできた、金正恩政権の基本方針を伝える文書ですので、参考のために全文を掲載しました。この種の演説文書は、番号と小見出しをつけるだけで、理解が格段と深まります。張成沢粛清後、北朝鮮は内向きになっており、金正恩は民衆の支持を得るために軽工業を重視し、消費物資の配給、商品供給を増やすことに政策の重点を置くことを意図していると見ています。もっとも事態が北朝鮮の思惑通りに進むか否かは、米国が北朝鮮にどう対処するかによって変化します。

北方領土問題は危機的状況です。その背景については、1月20日に徳間書店から刊行される拙著『元外務省主任分析官・佐田勇の告白 小説・北方領土交渉』を読んでいただくとわかります。(…以下略)

【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol028】目次
―第1部― インテリジェンスレポート
 ■分析メモ No.64 「金正恩の『新年の辞』」
 ■分析メモ No.65 「ロシア外務省の対日政策転換」
―第2部― 読書ノート
 ■読書ノート No.85 『独裁者のためのハンドブック』
 ■読書ノート No.86 『サムライ 評伝 三船敏郎』
 ■読書ノート No.87 『民衆こそ王者 池田大作とその時代I「人間革命の奔流」篇』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 今後のラジオ出演、講演会などの日程

分析メモ No.64「金正恩の『新年の辞』」

〔PHOTO〕gettyimages

【コメント】
2.―(1)
「新年の辞」の冒頭で金正恩は、<わたしはまず、全人民軍将兵と人民の限りない懐かしさと熱い敬慕の念をこめて、偉大な金日成同志と金正日同志に慎んで崇高な敬意と新年の挨拶を送るものです。>と述べ、死者である金日成と金正日の遺訓に基づいて国家が運営されるという基本方針を確認した。

2.―(2)
他方、結語では、<偉大な金日成・金正日主義の旗のもとに前進するわれわれの革命偉業は必勝不敗です。>と述べ、金正日時代には語られることのなかった「金日成・金正日主義」という新たなイデオロギーによって、党と国家を指導する方針を明確にしている。これは、1930年代のソ連において、スターリンがマルクス主義からレーニン主義(あるいはマルクス・レーニン主義)へのイデオロギー的転換を進める中で、自らの独裁体制を確立していったプロセスに類似している。

2.―(3)
上述の(1)と(2)は、矛盾したベクトルを示している。現政権は、現代の情勢に適応する金日成・金正日主義の確立という名目で、遺訓政治の枠組みに縛られない政策選択のフリーハンドを得ようとしているものと思われる。

3.
金正恩は、<わが党は昨年、強盛国家の建設をめざす誇りあるたたかいの時期に、党内に潜んでいた分派の汚物を除去する断固たる措置を取りました。わが党が適中した時期に正確な決心をして反党反革命分派一党を摘発粛清することによって、党と革命隊伍は一層打ち固められ、われわれの一心団結は百倍に強化されました。>と述べ、名指しこそしないものの張成沢を「党内に潜んでいた分派の汚物」と規定し、粛清を正当化した。粛清に関する言及はすべて過去形でなされており、張成沢分派の粛清に「新年の辞」で一応の区切りをつけたものと見られる。(…以下略)

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