安倍首相「株価頼み」は危ない!口先だけでなく岩盤規制に風穴を開けられなければアベノミクスは失速する

 安倍晋三首相は昨年末の12月30日、東京証券取引所の大納会に出席した。利害得失がせめぎ合う“鉄火場”ともいえる兜町に首相が足を踏み入れるのは極めて異例で、大納会への出席は歴代首相で初めてのことだったと報じられた。しかも挨拶に立った首相は「来年もアベノミクスは買いだ」と、株式の買いを促すような発言までしていた。

 政策の決定権を握る政治家がマーケットに影響を与えるような発言をするのは禁じ手である。先物やオプションなど金融派生商品(デリバティブ)が広がった現在のマーケットでは投資家のポジションは様々で、株価が上がれば必ずしも利益を得る人たちばかりではない。「株は買いだ」と直截的に言ったわけではないので、ギリギリセーフとも言えるが、見識が問われかねない発言だったことは間違いない。

 それほど安倍首相が焦っていると見ることもできる。自らが進めてきたアベノミクスへの期待が大きい分、目に見える成果を示さなければならない。特定秘密保護法の制定などが響き、内閣支持率が10ポイント近くも下落したことも大きい。

機関投資家の間でささやかれるPKO

 ところが、アベノミクスによる円安でも、輸出の伸びは思ったほどではなく、貿易赤字が拡大。公共工事の大盤振る舞いにもかかわらず、地方から「景気が好転した」という声は中々届かない。景気回復をけん引しているのは消費だけと言って過言ではない。大都市部の高額品消費が伸びているのだが、株高による「資産効果」が大きいと見られている。つまり、株高が続いてくれることこそが、アベノミクスの効果を着実に生み出すとも言えるのだ。アベノミクスは買いだと言って口先介入し株価を上げたくなる気持ちは分からないでもない。

 官邸に出入りする幹部官僚によると、首相周辺は株価をかなり意識している、という。アベノミクスの一環として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しが議論されているが、首相に近い政治家は「もっと日本株を買わせろ」と言っているらしい。バブル崩壊後の1992年頃にPKO(プライス・キーピング・オペレーション)という言葉が広がった。国連の平和維持活動をもじった言葉だったが、郵便貯金や簡易保険、公的年金(国民年金や厚生年金)などの資金で株価を買い支える行為を指していた。

 景気が焦点になると必ずと言ってよいほど、このPKOが浮上してくる。日本の金融破たんが続いた1998年頃もそうで、当時の小渕恵三首相は青果店の店頭で、「株上がれ」と言って野菜のカブを両手で持ち上げるパフォーマンスまでやってのけた。一方で、巨額の経済対策として公共事業を大幅に積み増した。結果は、株価は上がらず、政府の借金は大きく膨らんだ。

 2008年のリーマンショックの後にもPKOという言葉が兜町で繰り返し聞かれた。麻生太郎首相時代のことだ。麻生氏も当時過去最大の景気対策を実施して、公共事業などを拡大した。

 そして今、再びPKOという言葉が機関投資家の間でささやかれている。同時にアベノミクスの二本目の矢の「機動的な財政出動」として大幅に公共事業を積み増している。かつての自民党政権が繰り返してきたPKOと公共事業という手法が復活しているように見えるのだ。

 ただし、PKOと言っても、かつてのように株価下落を食い止めるのではなく、株価を上昇させる公的資金などの「買い」が入っているのではないか、と証券界の幹部は言う。

 「異次元の金融緩和」を実施中の日本銀行は流動性の供給方法として様々な資産を買い入れている。それにはETF(上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)なども含まれる。こうした金融商品を日銀に買わせれば、日経平均株価を上げることは十分に可能だというのだ。

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