冷戦終結後4度目の防衛大綱改定 中国の台頭を強く意識「統合機動防衛力の構築」目指す[安全保障]
尖閣諸島・久場島の北東の接続水域を航行する中国国家海洋局の公船=沖縄県で13年9月11日

政府は昨年末、今後10年間の防衛力の整備方針を示す「防衛計画の大綱(防衛大綱)」を改定した。民主党政権時代の2010年に改定されたばかりだが、自民党の政権復帰を受け、安倍晋三首相が再改定を指示していた。新たな大綱は、南西地域の防衛を重視し、自衛隊の展開能力を高めていくという旧大綱の方向性を継承しつつ、中国の軍事的台頭をより強く意識。「実戦」を念頭に置き、これまで以上に積極的に防衛力を強化していく方向性を打ち出している。

防衛力の整備には装備品の開発や購入、部隊編成など、成果が出るまで数年~十数年かかる事柄は少なくない。そこで政府は1976年、中長期的に自衛隊が何に備えるべきか、そのためにどのような防衛力を保有すべきかの大方針を示すため最初の大綱を策定。その後も冷戦終結や米同時多発テロの発生など安全保障環境の変化に応じて95年、04年、10年に見直しを行ってきた。

4回目の見直しとなった今回の大綱で、防衛力整備の基本理念に位置づけられたのが「統合機動防衛力の構築」だ。

「統合」は、陸上・海上・航空3自衛隊による一体的な活動を意味している。何らかの有事が起きた際、どれか一つの自衛隊だけで対応するのは困難で、「空自の航空機の支援を受けながら、海自の艦船が陸自部隊を輸送する」などの共同作戦が不可欠となる。ところが戦後の長い期間、「実際に有事が起きるかもしれないという切迫感がなかった」(政府関係者)ため、陸自は陸自だけ、海自は海自だけ、空自は空自だけで作戦をつくり、そのための装備品を購入する状態が継続。組織の縦割りを排し、より「実戦」を意識した防衛力整備を行う必要が生じていた。

一方「機動」という言葉には、部隊を素早く展開させたり柔軟に運用することで、人員や装備を固定的に配置しておくよりも高い防衛力を発揮できる、との考えが込められている。冷戦期はソ連による日本侵攻を未然に防ぐため、自衛隊を全国各地に配置することに力点が置かれていた。ところが冷戦終結後、日本に対する大規模な上陸侵攻が起きるおそれは大幅に低下。財政状況の悪化で各地の部隊を維持し続けるのが困難になっているとの事情もあり、部隊の規模を追求するより展開能力を充実させるべきとの意見が出されていた。

この二つの要素を組み合わせたのが「統合機動防衛力」だが、このうち「統合」の重要性は旧大綱においても指摘されている。また、旧大綱の基本理念に採用された「動的防衛力」も部隊の展開能力を重視する考え方で、新たな大綱の「機動」とほぼ同じ意味だと言える。旧大綱と新たな大綱を比べた場合、その基本理念に違いはほとんどないというのが実情だ。

離島防衛に水陸両用能力を向上

ではなぜ今回、大綱の見直しが必要だったのか。防衛省幹部は「政権交代も理由の一つだが、それ以上に前回の大綱策定以降、日本周辺の安全保障環境が予想を上回るスピードで変化していることが大きい」と説明する。

その最大の要因は、東シナ海における中国の活動の急速な拡大だ。日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化した12年9月以降、中国側は▽尖閣諸島周辺で初の領空侵犯(12年12月)▽海上自衛隊の艦艇などに射撃用レーダーを照射(13年1月)▽東シナ海に防空識別圏を設定(13年11月)――など日本への圧力を強めてきた。武力攻撃には至らないものの、日本の領土・領海・領空が脅かされる「グレーゾーン」事態の慢性化も指摘されている。

こうした状況の変化に対応するため、南西地域における防衛力強化策をより具体的に書き込んだのが新たな大綱の特徴だ。尖閣諸島など離島への侵攻が起きた場合を想定し「速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦能力を新たに整備する」と明記。また、離島防衛に欠かせない海上優勢・航空優勢についても「確実に維持する」との文言を盛り込んだ。

離島防衛の充実に向け、3自衛隊で最も多くの隊員を抱える陸自の変革を打ち出したのもポイントとなっている。全国各地に固定的に配置してきた陸自部隊を大幅に削減するとともに、北海道と九州以外の戦車部隊の廃止を初めて表明。代わりに離島への着上陸作戦を専門的に行う「水陸機動団」の創設や、長距離移動に適した装備を持つ部隊の編成などを盛り込み、「対ソ連」から「対中国」へ、「北方重視」から「南西重視」への方向転換を掲げている。

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