第63回 藤山寛美(その二)取り立て屋が何人も舞台袖に来た。数十億円もの借金とたたかう日々
福田 和也

渋谷天外(2代目)松竹新喜劇を結成した喜劇俳優で劇作家。寛美(写真右)とコンビを組み、テレビ喜劇を大ヒットさせる

さる年の新橋演舞場。
源氏鶏太原作、館直志(渋谷天外)脚色の『新・三等重役』で、寛美はストライキを敢行する若い社員を演じて、大当たりをとり、新聞各紙や週刊誌で、賞賛された。

褒められたのはいいが、酒場での派手な振る舞いを面白おかしくかき立てられたのには、閉口したという。

「『銀座のクラブで『一人一万円』のチップをきった。』と鬼の首でもとったように言うのです。これはたしかに事実です。東京のタレントさんは毎日東京に暮らしている。私は七夕さんのように一年一回。毎月来てバー遊びして、一回一人千円のチップをきったと計算してもらったら、高くないとわかります。私は一年分を一ぺんに遊んだわけです。/また銀座のゲイバーで藤山寛美と染めぬいた着物をおくったことも批判されました。これもPRの一種で。それを着てもらって、見てもらえたら結構な話です」(『あほやなあ』)

昭和三十四年、寛美と妻・峰子の間に、女の子が生まれた。
出産の喜びは、長くは続かなかった。
寛美の講演会を手伝っていた工房のスタッフに五百万円の小切手を持ち逃げされたのだ。

追い打ちをかけるように、暴力団に数千万円の手形を盗られてしまった。
そして昭和三十八年、大阪裁判所から、破産通告がつきつけられた。
道頓堀に、「藤山寛美は騙りだ」という大看板がかけられ、舞台にでると、「破産屋!」、「いつ返せるのや」という声がかかる有様。

そして、もっとも大きな災厄が訪れた。
渋谷天外が倒れたのである。

『週刊現代』2014年1月18日号より