官々愕々 謹賀新年? 都知事選の夢

謹賀新年。

この正月、最もうまい酒を飲むのは誰だろうか、と考えてみた。やはり、何と言っても、東京電力に融資している銀行幹部だろう。

昨年末に、東電の事故処理について、国民の税金と電力料金で銀行の借金を無傷で返し、廃炉、除染、汚染水処理で新たな負担が生じても、全て国民と消費者につけ回しして、銀行には一切危険が及ぶことはないという仕組みが事実上完成した。特別背任覚悟で実施した福島事故直後の東電への2兆円の無担保追い貸しも完全無傷で守られる。本当に運の良い人達だ。彼らにコバンザメのように付き添って、そっとうまい汁を吸っている経産省官僚と自民党議員も、美酒に酔っている口だろう。

それとは逆に、浮かない顔で新年を迎えなければならない人も多い。消費税増税の影響をもろに受ける小売店経営者。遅遅として進まぬ復興に苛立ちを強めながらの新年となった被災地の方々・・・・・・。

猪瀬知事の失脚で知事選を迎える都民の中にも、オリンピックムードに水をかけられ、大事な時期にまた大金を使って選挙とは、と浮かぬ顔をしている方も多そうだ。しかし、都知事選も悪くはないかもしれない。

「都知事選は地方選だ」と安倍総理は予防線を張った。しかし、東京と言えば、日本の顔、どうせやるなら、「東京から日本を変えよう!」という都知事選にできないものだろうか。国政の大きなテーマを取り上げて、都知事選を事実上の国政選挙にしてしまうのだ。

公約の第一は、脱原発。東京都エネルギー戦略会議を立ち上げ、脱原発のエネルギー基本計画を作る。東電の大株主として東電に脱原発を迫る。猪瀬知事も脱原発は言えなかった。東京に電力を販売する独占的企業(要するに東電)に、電力料金についての説明を求める条例を作る。

次に、日米地位協定の改定。「横田ラプコン」と呼ばれる、米軍の巨大な支配空域を日本側に取り戻す。受け入れない場合には、横田基地(東京都)への各種公共サービスを停止すると通告する。横田ラプコンがなくなれば、1都8県にまたがる治外法権の空域が日本に取り戻され、羽田離着陸の際に房総沖までの旋回を強要される民間機の飛行時間の大幅縮減が可能だ。羽田の利便性向上に貢献できる。名護市長選とのタイアップも可能だ。

基地問題は、特定秘密保護法の問題でもある。騒音対策、安全対策などに関する米側との過去の折衝の議事録を全面開示するよう政府に要求する。情報公開法や公文書管理法の抜本的改正とともに、特定秘密保護法についても、第三者による監視機関の設置や、都の職員が特定秘密を取り扱うこともあることから、国による都職員の適性評価の制限を求める。

さらに、百条委員会設置による徳洲会マネー問題の徹底追及を掲げれば、安倍政権も慌てるだろう。石原都政や国政とのつながりを解明する突破口を提供することになれば、自民党政権そのものが揺らぐ可能性すらある。

他にも、農業や医療などでの大胆な規制緩和など、安倍政権がやらない課題を掲げる。単なる人気投票、後出しじゃんけんなどと揶揄される都知事選だが、こうしたテーマで戦える候補者が出てくれば、地方選挙ではあるが、真剣に政策が議論され、「Stop 安倍!」という選挙になるだろう。

問題は、知名度と実力があって、しかも、電力会社などを敵にして戦う勇気のある候補者がいるかどうかだが。

初詣で祈願してみよう。最後に「小泉純一郎元総理が応援に来てくれますように!」と加えて。

『週刊現代』2014年1月18日号より

原発の倫理学(価格:1470円)
話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。