田原総一朗のニッポン大改革

田原総一朗 × 佐々木俊​尚 Vol.3
「これから日本は総透明社会になると思います」

2014年01月09日(木) 田原総一朗
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[左]佐々木俊​尚さん(ジャーナリスト)、[右]田原総一朗さん(ジャーナリスト)

第五世代コンピュータは実ビジネスにつながらなかった

田原: 行政も民主主義のような国家の形も崩れていくだろう、と『レイヤー化する世界』に書かれていますけれど、それはどういうことですか?

佐々木: アベノミクスを考えるとすごくわかりやすいんですが、金融、財政政策をやったけれども、三本目の成長戦略は成果が上がっていないと散々いわれたているわけですよね。そもそも成長戦略なんて可能なのか。今までの日本の経済産業分野の成長戦略はずっとやってきたわけですが、基本は規制緩和と産業振興ですよね。

とくに後者の産業振興がすごく問題で、産業振興政策といいながら成功した政策がはたしてあったのか、という議論があるわけですよ。実際にコンピュータ関係の政策でいっても、第五世代コンピュータとかやって大失敗していますよね。

田原: 第五世代コンピュータは失敗だったんですか?

佐々木: 一応何らかの実験結果は出ていますけれども、それが実ビジネスにつながったかというとまったくつながっていないので、そういう意味では産業振興にはなっていないんですよね。だから、結局国が何か音頭をとってこの産業を盛り上げようといっても盛り上がらなくて、最終的には民間企業の勝手な自助努力によって何とかなるしかない。

日本でそれが問題にならなかったのは、とりあえず戦後の高度経済成長のなかで成長はしていたので、官僚のやっていることが多少ちぐはぐでも、それに紛れて官僚の判断ミスとか、実は何もできていないということが目立たなかっただけというのが現実だったんじゃないかな、と思います。

これが失われた20年になっていったなかで、結局民間で大した成長力を持つ業種が出てこない。そのなかで「国は何をしているんだ」という声が高まる。だけどやっぱり国は何もできていない。ーーというのがこの20年のくり返しだったと思うんです。これはアメリカでもヨーロッパでも同じだと思うんですよね。そういうなかで、じゃあ国には一体何ができるの、と。

そうはいっても一時経済産業省がバルーンを上げていましたけど、それこそパナソニックとかシャープのような傾いた企業の工場を国が買い上げて公的資金注入みたいなことを、一時的な支援としてできるかもしれない。

でも、たとえば日立は本社機能を海外移転し始めているんですが、それと同じようにもしもシャープが「もう日本はダメだから、本社機能をすべてシンガポールに移します、工場もすべて海外移転します、今後役員も全員海外で外国人を雇います」ということになったとしたら、それははたして「日本企業」といえるのかどうか。

要するに日本企業に公的資金を注入しているつもりで、実は外国企業に注入しているだけじゃないか。資本と登記上の住所が日本に残っているだけで、他はすべて海外ということが十分起きてくるだろう、と。

実はアメリカ企業といいながら、税金も払っていないし本社機能もリヒテンシュタイン辺りにあるという企業もあるわけです。しかも、従業員がその国にいないということになると、国と企業という関係が最早従来と違う形になってしまうということも考えられるわけです。

『レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる』
著者=佐々木俊尚
NHK出版  / 定価861円(税込み)


◎内容紹介◎

情報技術の革新は、メディアや産業の構造を根底から変え、超国籍企業を生んで労働と富のグローバル化を加速し、国ぐにの力を殺いだ。ITを基盤としたシス テムそのものが権力化するなか、個人もまた、生きかたの変容を迫られている。これから来る世界はいったいどのようなものなのか。そこでわれわれはどう生き ていけばいいのか。斯界の第一人者が、テクノロジーの文明史を踏まえて未来の社会像を鮮明に描き出す。

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