第35回講談社ノンフィクション賞受賞作品『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』(高野秀行著)より

受賞のことば

新たなる未知探検人生の幕開け  高野秀行

「未知」や「謎」が三度の飯より好きで、二十数年ずっとそんなものを追いかけてきた。特に科学的に存在が確認されていない「未確認動物」には情熱を燃やし、コンゴのモケーレ・ムベンベや中国の野人、ブータンの雪男などいろいろ探索してきたが、未確認動物には「全然見つからない」という大きな欠点があった。

もちろん、私だって洒落やネタでそんなことをやっているわけではない。発見の可能性も0.1パーセントくらいだと心得ている。しかし、いつもいつも見つからないと志気は当然下がっていく。

そこで新たなターゲットにしたのが未確認国家ソマリランドである。同じ未確認とはいえ、「国家」である。まったくの幻ということはないだろう。

私の目論見は当たった。行ってみると、世界中のほとんどの人がその存在を知らないにもかかわらず、ソマリランドはしっかり実在した。なにより嬉しかったのは、「発見」につづく次のステップに初めて進めたことだ。

次のステップとは謎の国家がなぜ存在しうるのか。その正体は何なのかということだ。対象が「国家」なだけに、取材は難しかったが、それを補うようにソマリランドとソマリ人の面白さは比類がなかった。それは本書をお読みいただけば、ご理解いただけると思う。

さらにこの地は外国人の手が入っていないため、「未知」や「謎」の宝庫でもある。今後も、ソマリランドに眠る謎の遺跡を探索したり、地理的に空白に近い地域をラクダで旅したり、日本で裁判にかけられている海賊の実家を訪問して彼らの生活を解明したり、『旅の指さし会話帳ソマリランド篇』や『現代ソマリ語入門』を書いたりと、やりたいことがいくらでもある。

私の未知探索人生は第二幕が開いたばかりなのだ。

謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア
著者= 高野秀行
本の雑誌社刊 / 定価2,310円(税込み)

◎内容紹介◎

終わりなき内戦が続き、無数の武装勢力や海賊が跋扈する「崩壊国家」ソマリア。その中に、独自に武装解除し十数年も平和に暮らしている独立国があるという。果たしてそんな国が存在しえるのか? 事実を確かめるため、著者は誰も試みたことのない方法で世界一危険なエリアに飛び込んだ---。世界をゆるがす、衝撃のルポルタージュ、ここに登場!

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