消費税率引き上げと低所得者対策 ~国民全員に4万円ばらまけ!~

消費税率の引上げは家計の所得を実質的に減らす政策であることを踏まえる必要がある。その上で、消費税率の引上げにより打撃を受ける世帯を考えると、所得が低く、貯蓄などを十分には持ち合わせていない世帯となろう。

消費税率の引上げにより実質的な所得が低下した際、ある程度、所得がある家計では、貯蓄を減らすことにより、また、貯金など金融資産がある家計であれば、貯蓄を取り崩すことにより、消費額を維持することができる。

しかし、所得が低く、また、貯蓄が低い家計は、実質的な所得の減少に対し消費額を減らさざるを得ない。このような低所得の家計の行動は、景気を冷やし、また、デフレ脱却の足を引っ張ることになる。

日本経済は、1990年代以降、景気の停滞が続き、非正規雇用も3割を超す水準となっている。消費税率引上げにより打撃を受ける世帯の割合は、消費税導入当初や1997年の税率引上げ時より高くなっている。

そこで、まず、消費税率引き上げの法律の中で、低所得者対策がどのように書かれているのか、確認する。

8%の段階では、簡素な給付措置が求められており、今回の対策では、8%から10%に引き上げられるまでの1年半の間の対策として簡素な給付措置が決められた。なお、簡素な給付措置の規模は3,000億円と、増税の規模に比してあまり少なすぎるであろう。次に税率10%(2015年10月)の段階で、低所得者対策として、「給付付き税額控除」、「軽減税率の導入」などの制度の導入を検討するとされている。

どちらの政策が望ましいのか

自民党・公明党が12日に決定した税制改正大綱では、「必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得たうえで消費税率10%時に導入する」とされ、来年12月までに結論を出すとしている。つまり、給付付き税額控除よりも軽減税率の導入に向け、大きく動き出していることは間違いない。

軽減税率の導入については、どのような品目を軽減税率のするのかという観点から政治利権となるおそれや、煩雑な事務処理などが指摘されている。しかし、問題の本質は、「軽減税率の導入」が「低所得者対策」の解決にはならないという根本的なものであり、それを再認識する必要がある。

「軽減税率の導入」が「低所得者対策」の解決にはならないという点については、筆者が24年5月の「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」の質疑の中で、明らかにした。ここで、長文となるが、当時の質疑を振り返る。

〈 軽減税率については、実は財務省でも十分に、これが間違った政策だということを御理解されていると私は思っています。

財務省は、9月8日、昨年(注 2011年)でありますが、財政制度分科会の中で議論を行っております。ここでIMFから、マイケル・キーン・シニアアドバイザーからの報告を受けている。

このパネルに示しておりますのはその資料をまとめたものでありますが、一番下に要約として書いております。単一税率を維持すべきだということ、そして、対象を限定した歳出措置、軽減税率などよりもよい方法だ、このように結論を一番下に書いております。

そして、こうした状況の中で、日本が仮に軽減税率を行った場合にはどういう結果になるかという試算がこのグラフであります。

これは、向かって右側は所得の上位ということですから、高所得者層です。そして左側が所得の下位、低所得者層。黄緑は、仮に単一課税15%とした場合の(追加的な)税負担です。9.3%。高所得の方は4.5%。

ここで、食料品を軽減税率10%にした場合、では負担はどうなるのかというと、この真ん中の緑です。これは9.3%、低所得者の方々。実は単一税率と変わらないですね。そして、高額所得者の方々は4.6%と少しだけ上がります。

さらに食料品の軽減税率を下げます。5%に下げる。その場合は、これは紫ですが、低所得者の方が9.2%、高額所得の方は4.7%。

実は、軽減税率というのは低所得者の対策にはならないということは明らかですね。そして、こうしたことは、実はヨーロッパ、諸外国ではもう既に実例の中で十分に把握をされています。

マイケル・キーン・アドバイザーは、このヒアリングの中で、他の地域における事例から得られる主要な教訓、これはヨーロッパの教訓ですが、この公平性という目的を達成するためには複数税率を用いるよりもよい方法、これは下にありますように、限定した歳出措置、すなわち給付つき税額控除です、これがよりよい方法であるとして、そして、過ちを犯すと修正困難だ、こうおっしゃっています。

この意味は何かといいますと、ひとたび軽減税率で下げてしまったらもう上げられないですね。イギリスは食料品をゼロ税率にしてしまいました。ゼロ税率にしてしまったがゆえに、これはこの棒グラフと同様に、低所得者の方々に決してプラスにならない状況が起きています。しかし、もうこれは変えられないとおっしゃっている。政治的な自殺行為、このようにマイケル・キーン・アドバイザーもおっしゃっています。

要は、軽減税率を導入したとしても、消費税により一定の財源を確保しようとした場合には、軽減税率対象品目以外の最終的な税率を高くする必要が生じ、低所得者層の負担は現在に比べほとんど変化しないことが、明確に財務省の審議会の中の資料で示されている。IMFが指摘する「政治的な自殺行為」をまさに、自民党・公明党は突っ走ろうとしている。

さらに、IMFは、軽減税率の導入よりは給付付き税額控除の方がより優れた政策だと指摘している。

ここで給付付き税額控除の仕組みを再確認する。仮に、所得税減税で税額控除を拡大した場合、負担する税額は減少することとなるが、もともと所得がない、もしくは所得が低い人に対しては、税額控除の恩恵がなくなる、もしくは十分ではなくなる。

これは、所得が低い人は、納付する所得税額も低いため、仮に所得税額が税額控除以下の場合には、十分な減税のメリットが受けられないというものである。ここで、十分な税額控除のメリットを受けられない低所得者層に対しては、控除できなかった枠の一定の割合について現金を給付するというものが給付付き税額控除の制度となる。このような制度は、カナダなど多くの国々で導入されている。

では、なぜ優れた政策だと指摘されている「給付付き税額控除」の導入に対して、政府が本腰にならないのか。この点についても、同日の国会の質疑の中で、指摘した。

〈 軽減税率は低所得者対策にならないことは、政府としても、これは自明であるということは、私は皆さん認識されていると思う。そして、この閣法を出されたわけでありますから、少なくとも給付つき税額控除、そしてこれを実現するためにはマイナンバー制度と歳入庁の創設というものは一体となっていなければなりません。

そこで、そのことについても、最後、時間がありませんが、確認をさせていただきたいと思います。

歳入庁の設置、これは、もともとは消えた年金の後の未納問題、これに契機を発したものでありました。そして、歳入庁を設置することによってこの未納を削減することができるということを私たちは言い続けてきた。この歳入庁設置の問題に対しては、政府は、4月27日、税と社会保険料を徴収する体制の構築についての作業チームの中間報告を出されました。そこで、類型一から類型三までの徴収体制のイメージが示されたんですね。

これを見ると、類型一の徴収業務統合というのは、これは、徴収は一緒だけれども給付は年金の機構の側の組織の方でやるんだよということです。これは一体となっているという前提だと思いますが。類型二は全業務統合です。そして、問題は類型三。これは、連携強化ということで、現状の国税庁と年金機構、変わらない状況なのですね。

この類型三が議論に入っていることから、マスコミは一斉に、歳入庁先送り、このように報じました。また、このようなことがもし現実のものとなって、歳入庁創設が先送りされるような骨抜きは絶対にあってはならないと私は思っています。

その上で、この歳入庁の設置、言いかえれば、私は、少しここは言い過ぎになるかもしれませんがあえて申し上げれば、先ほど申し上げた軽減税率の導入は、歳入庁の創設を必要としないということになりかねない、そして、歳入庁の創設を拒否したい、避けたがっている一部の霞が関もあるのかもしれない、どこの役所とは申し上げませんが。

そのような状況の中で、仮に軽減税率に前向きになる、あるいは歳入庁創設が先送りになるというようなことがあった場合には、それこそ社会保障と税の一体改革とはほど遠い改革になりかねないですね。 〉

要は、「給付付き税額控除」の導入には、民主党が長年求めてきた歳入庁の設立が必要となるが、これには、霞ヶ関に大きな抵抗勢力があるのではないかと、指摘した。残念ながら、この指摘の通り、給付付き税額控除の導入のインフラとなる歳入庁構想自体、ほとんど議論されていないと言っていいだろう。

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