HASUNA代表・白木夏子
「纏う人の心に豊かさと美しさを提供できるようなものづくりを」

ペルー金鉱山採掘現場を視察する白木氏(右)

エシカルを「人や社会・環境の様々な問題をケアすること」と定義し、人や自然環境に配慮した"エシカルジュエリー"をつくり届ける「HASUNA」。

ジュエリーをつくり届けるその過程で、採掘現場での児童労働や搾取、環境破壊などの悲劇が引き起こされるべきではない、という考えのもとHASUNAは、ボツワナのダイヤモンド、コロンビアの金など、エシカルな素材をフェアトレードで仕入れている。

身につける人だけでなく、デザイン・素材調達・生産・流通過程において、関わるすべての人に幸せをもたらし、社会や自然へ負の影響を与えないのが、HASUNAの"エシカルジュエリー"だ。

HASUNAのジュエリーデザイナーであり、代表取締役社長を務めるのが白木夏子氏(32)だ。10代の頃に途上国支援に興味を持った白木氏は、ロンドン大学で国際開発学を学び、国連でのインターンも経験した。在学中に見た"ある光景"に衝撃を受け、その問題を解決するための方法を模索し、迷いながらも、不動産投資ファンドでビジネスの経験を積む。その後、その想いと経験をもとに、HASUNAを立ち上げた。

HASUNAが生まれた原点、そして、彼女がその先に描く未来とは---

2014年4月、HASUNAをジュエリーブランドとして立ち上げてから6年目に突入する。

自分は現在32歳。6年前を思い返すと、経営の「け」の字もほとんど分からなくて悪戦苦闘の毎日を送っていた。

起業する前は、3年程企業に勤めていたこともあり、色々な局面でカルチャーショックを受けたことを思い出す。「勤め人」でなくなると社会的信用も雇用保険も何もかも失うことを体験し愕然とした。私が倒れたら全て終わりだ。失業保険もない。そうだ、私はそんなリスクを取って自由と夢を実現させる時間を手に入れたんだ。起業すると誰もが経験することだと思うけれど、期待と不安が交互に現れ気分の浮き沈みが激しく、眠れない日が続いていて本当に青臭かった。

おそらく2020年になった時に振り返ると、今現在の自分もとても青臭くて恥ずかしい人間なのだろう。今は今で毎日必死だし、毎日最善の選択をして生きているつもり。だけど仕方ない、自分が年を取れば取る程「今」より成熟していないものが全て青臭く感じるのだから。

忘れられない原体験

よくよく考えてみると、私が起業した2009年から更に6年前、今のビジネスに繋がる「忘れられない原体験」をしていた。

2003年、当時大学1年生だった私はインドにいた。南インドのチェンナイからバスと徒歩で5、6時間ほどの小さな村を、とあるインドのNGO職員と共に転々とし、貧困問題に関する卒論のリサーチをしていたのだ。

インドに到着してから約1ヶ月後、雨期が遅れ連日最高気温は40度に限りなく近く、夜もろくに眠れていなかった。インドのどこどこの街で数十人が熱波で死亡したとかいうニュースを毎日耳にしながら、朦朧とする意識の中でとある村に行き着いた。鉱山労働者たちの村だった。

私はそこで働く子どもやその親たちと寝食を共にした。とにかく暗くて息苦しかった。暗いというのは光や影の問題ではなく、雰囲気の暗さだ。村に一歩足を踏み入れれば、その村がどれだけストレスを抱えている村なのか大抵分かる。子どもの表情、大人の目つき、散乱するゴミ、路上に溢れ変える汚水。ストレスは様々なところに滞る。

「昨日も一食しか食べてなくて……」
「居住区の井戸水は汚染されていて、この前もそのせいで子どもが死んだんだ」「素手素足で鉱山で働かなきゃいけない。怪我しても病院に行くお金がない。薬も買えない」

助けてください、どうか、助けてください、と濁った目で助けを求められた。

でも、自分は何もできなかった。

暑くて眠れない夜。蚊帳から入ってきた蚊に刺された足を掻きながら、天井のヤモリの鳴き声と犬の遠吠え……聞いた事も無い虫の音を月明かりの中で聞きながら、何の役にも立てない自分がことごとく嫌になった。自分が情けなさすぎて涙さえも出なかった。今でも彼らの濁った目と乾いた唇、僅かな水分を求めて人々の顔に集る蠅、傷だらけの手や骨が折れた状態でくっついていてそのまま生活している子どもの姿が忘れられない。

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