ネイト・シルバー「なぜメジャーリーグのスカウトは予測を間違えるのか? ビッグデータ時代の落し穴」
~『シグナル&ノイズ』より~

著者のネイト・シルバー (c) Robert Gauldin

「選挙予測の達人」「天才的データ分析家」として、いまや米国ジャーナリズムの寵児として注目を集めるネイト・シルバー。

彼が初めて書き下ろした『The Signal and The Noise』は、米Amazon.comの年間ベストセラー(2012年度ノンフィクション部門)に選出されるなど、500ページ超の統計関連書籍としては驚異的な売れ行きを記録している。

12月に発売された日本語版『シグナル&ノイズ』の一部をここに抜粋し、彼のデータ分析と予測に対する洞察の一端を紹介しよう。今回は、MLBの2013年度ワールドシリーズを征したボストン・レッドソックスの名二塁手ダスティン・ペドロイアに関する話だ。

なぜペドロイアは過小評価されたのか?

私はフェンウェイ・パークである人と会った。レッドソックスの名二塁手、ダスティン・ペドロイアである。私がシンクタンクのベースボール・プロスペクタスのために開発したPECOTAという予測システムが「将来の有望株」と予測して以来、お気に入りの選手だった。

PECOTAの予測は、多くのスカウトとは対照的だった。スカウトたちは、ペドロイアを「身体的に恵まれていない」として、背の低さと大振りに難をつけ、重要な選手にならないと結論づけていた。

一方、PECOTAは、2006年シーズンで4番目に有望な選手とした。ベースボール・アメリカ誌は、昔からスカウトの意見を重視しており、ペドロイアを77番目に位置づけた。一般的な見方は、次のようなものだった(スポーツ専門チャンネルのESPNのキース・ロウが、ペドロイアが新人のときに書いたレポートである)。

〈 ペドロイアにはメジャーリーグの投球をコンスタントに打ち返すバット・スピードがなく、パワーも足りない。2割6分程度の打率をキープできれば、レギュラー選手として活躍できるかもしれない。サードやショートへのゴロをうまくさばくことができるなら、控えの内野手として役に立つだろう 〉

ロウはこのレポートを2007年5月12日に発表している。この時点でのペドロイアの成績は、打率2割4分7厘でホームランはわずか1本だった。正直に言えば、私も自信を失いかけていた。彼の打席はほとんど見ていたが、まったく歯が立たないように見えた(だから私は野球ゲームのなかでペドロイアをトレードに出した)。

『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』
著者= ネイト・シルバー
日経BP社刊 / 定価2,520円(
税込み)

◎内容紹介◎

大統領選挙での「オバマの勝利」を二度にわたり完璧に予測し、全米中を騒然とさせた天才的データサイエンティスト、ネイト・シルバーによる話題の書。金融市場、天候、政治(選挙)、プロスポーツなど、さまざまな分野における予測の重要性と精度、失敗例・成功例などに具体的に言及しながら、複雑に絡み合った情報のなかに混在するシグナル(予測の手がかり)とノイズ(雑音)の見分け方、陥りやすい落とし穴、予測の精度を高めるための手法などを平易な言葉で解説する。ビッグデータ分析のための貴重なヒントを凝縮した一冊。

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