『古代世界の超技術』著:志村史夫---古代の超技術─非「経済的」・非「効率的」の賜

私は長年、物理学を生業とし、特に現代文明の支柱〝ハイテク(高度先端技術)〟のエレクトロニクスに結びつく半導体に関する研究に従事した者です。

このような私が昨年末上梓したのが『古代日本の超技術〈改訂新版〉』(ブルーバックス)です。「旧版」(一九九七年発行)で述べた縄文時代の技術、適材適所、木の加工、倒れない五重塔、朽ちない鉄、奈良の大仏に、最近行った「日本刀の科学的研究」、「古代瓦の科学的研究」の知見を加筆しました。

それらは、現代の〝ハイテク〟の目から見て〝あっと驚くご先祖様の智慧〟ばかりです。このたび上梓した『古代世界の超技術』(ブルーバックス)は、この『古代日本の超技術』の姉妹編ともいうべきものです。

歴史探訪を趣味の一つとする私は、いままでに国内外の数多くの歴史的建造物・古代遺跡を訪ね歩きました。私はその都度、コンピューターはもとよりクレーンなどの大型土木・建築機材が存在しなかった古代の技術に驚嘆し、古代の技術者に畏敬の念を抱きました。

我田引水と思われるかも知れませんが、歴史的建造物や遺品を見る時、文献主義の考古学者や歴史学者とは異なるハイテク分野にいた者だからこそ〝見える〟、〝感じる〟、〝感心する〟、〝驚く〟ことは少なくないのです。古代の遺物の構造やしくみ、それを支える道具や技術、それらの根底にある科学について、より深く理解できるからだと思います。

私は、それらの〝作品〟を目の前にするたびに、コンピューターやさまざまな機材に頼る現代人ではとても及ばない、古代の技術者の信じ難いほどの能力を摩訶不思議とさえ思います。それらはまさに〝ハイテク〟を超えた〝ウルトラテク(超技術)〟と呼ぶにふさわしいものです。

私が古代日本と古代世界の〝超技術〟にひたすら感心し驚異を覚えることは共通なのですが、両者の間には顕著な差があります。

古代日本の技術の基盤が「木の文化・文明」にあるのに対し、古代世界のそれは「石の文化・文明」にあることです。もちろん、それらはそれぞれの風土、地勢、地理と不可分のものです。

私がいつも圧倒されるのは、日本にはない古代世界の巨石・巨大遺跡です。

 
◆内容紹介
最先端の結晶工学と驚くべき共通点をもっていた「ピラミッドの構造」。ボイル・シャルルの法則を応用していた「古代ギリシャの自動扉」。鉄筋コンクリートをはるかに上回る「ローマン・コンクリート」の強度。最新の観測装置と0.0002日の誤差しかない、超精密な「マヤの天文学」。カミソリの刃さえ通さない、「インカの石組み術」の驚異。現代のハイテクを知り尽くす半導体研究者が、自ら体験・実験して読み解く「技術史ミステリー」第2弾!