企業・経営
集中連載「健康市場の〝黒船〟」第2回
甘い認証基準と天下り機関が生む、日本製サプリの「玉石混交」

井上 久男 プロフィール
Bloomberg via Getty Images

【第1回】はこちらをご覧ください。

サプリなどの健康食品業界に迫っている機能性表示の規制緩和に外資勢、特に米国メーカーは歓迎の意向を示す。TPPが成立すれば関税ゼロで日本市場に攻勢をかけられるからだ。高齢化社会の進展や健康意識の高まりとともに、日本ではサプリなど健康食品の利用者は増える傾向にあり、外資にとっても日本市場は垂涎の的だ。

サプリ「ネイチャーメイド」を展開し、テレビCMも流す大塚製薬。開発や生産は、同社が買収した米国のファーマバイト社が担当、大塚製薬が輸入販売している。

同社でサプリや特定保健用食品(トクホ)などを担当するニュートラシューティカル(NC)事業部・ネイチャーメイド担当の渡辺裕吾氏は「規制緩和には賛成。商品に科学的根拠を示すことができるようになれば販売増につながる可能性もあるので、ありがたい」と自信を見せる。2012年度の大塚製薬の売上高9678億円に占めるNC事業の比率は21%だが、今後はさらに高まる可能性もある。

米国に本社を構えるアムウェイ・コーポレーションの子会社である日本アムウェイも、規制緩和を契機に日本市場での攻勢を狙う。同社のサプリブランド「ニュートリライト」の国内販売は現状で約330億円ある。

プロダクトブランドマーケティング本部の長田賢俊本部長は「販売手法で過去に問題点はあったが、現在はコンプライアンス体制を整えている。新制度導入を契機に日本市場で再攻勢をかけていきたい。韓国や中国でもトップシェアを獲得しているが、日本では5位以内にも入っていない。今回の規制緩和が実現すれば、販売を大幅に伸ばすのも夢ではない」と説明する。

米国基準で合格した日本のメーカーは100社中5社のみ

日本アムウェイなど米国系企業が販売増に自信を持つのには理由がある。それは、自社製品の品質と安全に絶対的な自信を持っているからだ。アムウェイをはじめ、薬学博士をずらりと揃えて医薬品メーカー並みの開発体制を取っているところが多い。

サプリは有用性が高まるほど、薬との飲み合わせの問題が浮上するが、米国では中立的な第三者が示した科学的根拠を元にした健康食品のデーターベース化も進み、薬との相互作用を提示できる体制が整っている。こうした体制が、「米国はサプリ先進国」と言われる所以でもある。
  
中でも米国基準の「cGMP(カレント・グッド・マニファクチャリング・プラクティス)」と呼ばれる第三者機関認証によって、生産工程などを厳しくチェックしている点が強みだ。日本でも「GMP」の認証制度はあるが、その水準は米国基準には遠く及ばない。

どういう点が違うかと言えば、cGMPの認証を得ている製品は、開発段階での試験方法などは最新の手法を入れることが求められている。そのため頭に「カレント=最新の」が付くのだ。旧来の手法と比べて、得られるデータがどのように違うかも記録しておかなければならない。

また、たとえばビタミンCが製品に何ミリグラム含有しているかは、日本の場合、原料メーカーが提示したデータをそのまま流用しているケースが多いが、cGMPを取得している製品は、最終製品を造るメーカーが自らビタミンCの含有量を測らなければならず、製品の消費期限の期間はその含有量を保証しなければならない。要は米国では、サプライチェーン全体で品質を維持していく体制ができているのだ。

さらに、米国メーカーは材料の調達から厳選している。日本アムウェイでは「カリフォルニアとブラジルに有機栽培の自社農園を保有しており、そこで収穫した材料をサプリに使っている」と説明する。これに対して、日本製サプリの中には、中国製の材料がかなり使われていて材料の品質に疑問符が付くケースすらあるという。率直に言って、日本のGMPは甘い管理基準で運用されているのである。

米国では日本の厚生労働省に該当する食品医薬品局(FDA)がサプリメーカーに対して、cGMPが適切に運用されているかなどを抜き打ち検査している。米国基準で日本のサプリメーカー約100社を調べたところ、合格点を得られたのは5社だけだったという。

ある業界関係者は「日本製サプリで消費者に提示されている有効成分が入っているケースは少ない」と指摘する。日本の有名大手メーカーの中には、テレビなどで派手にCMを展開している企業もあるが、専門家の中からも「製品の有用性は怪しい。宣伝費に金をかけるのならば、もっと開発費に投資しないと、規制緩和で外資が日本市場に入ってきたら淘汰されかねない」と指摘する声も出ているほどだ。

現に筆者が派手に宣伝している日本の有名大手に今回の規制緩和への対応について取材をしたいと申し込んだが、「お断りしたい」との返事だった。

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