消費税免除まで打ち出した
「郵政改革法案」亀井のホンネ

政局の軸に浮上した日本郵政問題

 日本郵政問題が政局の軸に浮上してきた。鳩山由紀夫首相と菅直人副総理兼財務相、仙谷由人国家戦略相の新トロイカ3人組vs亀井静香郵政改革相兼金融相という構図である。今後の展開によっては、参院選の大きな争点になりそうだ。

 それにしても、亀井が発表した郵政改革法案の骨格は民営化の流れを180度逆行させたひどい内容である。

 ゆうちょ銀行の預け入れ限度額を2000万円に引き上げるとともに、日本郵政グループ内の取引にかかる消費税500億円も免除する。さらに非正規社員10万人を正社員化するという。

 ようするに家計の貯蓄をこれまで以上に日本郵政が吸収し、国債を購入する。加えて消費税免除という形で政府が事実上の補助金を投入し、増大する人件費に回すのだ。官業復活どころか、新たな「御用金調達機関」が誕生するとみていい。

 私は昨年末、国民新党本部に呼ばれ、郵政問題などについて亀井代表はじめ同党議員たちと議論したことがある。そのときブレーンの学者から「あなたはなぜ郵政民営化がいいと思うのか。2分で説明してみよ」とふっかけられた。亀井の考えを直接確かめるいい機会だと思ったので、私は次のように話した。

「まず話の前提として、私は日本経済には成長が必要だと思っている。大臣は賛成ですか、反対ですか?」。亀井の答えは「もちろん成長は必要だ」だった。

 この国では「経済成長は必要ない」という議論がときどき思い出したように巻き起こる。最近もそんな感じだ。とくに新聞記者の中にはそういう議論が好きな人がいて、「成長を追求するよりも格差を是正せよ」と声高に唱えたりする。

 もしも亀井がそういう論者だとしたら、話の大前提が違ってしまう。だが大臣はさすがに、そんな暴論は唱えなかった。そこで次の話になる。

政策投資銀行の買収を画策

「では、大臣は日本経済が成長するために公的部門と民間部門のどちらが重要な役割を果たすと考えますか」。亀井の答えは「当然、民間部門に決まっている」

 それを聞いて、私は少し安心した。「それなら私の考えと同じです」

 経済が成長するのに公的部門よりも民間部門が重要であるのは、歴史的にも理論的にも証明されている。

 ひと言で言えば、競争がないうえに、非効率であっても公共財に資源を投入する役割を担っている公的部門より、常に激しい市場競争にさらされ収益を上げねばならない民間部門のほうが生産性が高い。だから経済全体の成長にとっては、なにより民間部門が大事なのだ。

 そこで日本郵政である。

 日本経済が成長を取り戻すには、ゆうちょ銀行とかんぽ生命がもっている約280兆円の資金を民間部門で運用したほうがいいか、それとも公的部門で運用したほうがいいか。答えは上記の理由で、なるべく民間部門で運用したほうがいい。

 民間部門で資金運用するには、日本郵政自身も民営化したほうがいい。公営のままでは、リスクをとって運用できないからだ。リスクをとってリターンを求める活動は本質的に民間の仕事である。

 ここまで説明するのに、2分もかからなかった。

 大臣からはとくに反論はなく、代わりに隣に座っていた亀井郁夫参院議員(亀井静香代表の実兄)が発言した。「長谷川さん、国民新党に来ませんか?」。私はもちろん即座にお断りした。

 今回の郵政改革法案が亀井の提案通り決まるなら、民間の資金を日本郵政が吸い上げて、せっせと国債を買い、公的部門を太らせるだけだ。それで日本経済が元気になるわけがないのである。

 財務省は国債を安定的に買ってくれる機関があったほうが安心だ。それに天下り先にもなるから、もちろん国営化に大賛成である。

 仰天プランもささやかれている。ある経済界の重鎮が教えてくれた。

「日本郵政は資金運用先に困っている。そこで日本郵政が日本政策投資銀行を買収してしまおうという話があるんですよ。財務省は日本航空支援で政投銀の融資に政府保証をつけようと画策したでしょう。結局、失敗したけど、実はあのとき『財務省との間で裏取引があった』とも言われている。
  政府保証をあきらめる代わり、政投銀の藤井秀人代表取締役副社長(元大蔵事務次官)を最終的には日本郵政が引き受けるという話です」

 財務省もしたたかに動いている。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら