企業・経営
集中連載「健康市場の〝黒船〟」 第1回
「サプリの表示緩和」が、厚労省・製薬企業・医師一体の「利権」を揺さぶる

医療費削減の切り札、サプリと「セルフメディケーション」

アベノミクス「第三の矢」の成長戦略の中で、健康産業の育成が大きなテーマに掲げられていることは多くの国民にまだあまり知られていない。その狙いは「セルフメディケーション」の推進にある。「セルフメディケーション」とは、健康管理は自己責任で行い、医師にかかる必要がないと見られる軽い身体の不調などは自分で手当てするという概念である。

その目玉政策として、2013年6月、「規制改革実施計画」および「日本再興戦略」においてサプリメントなどの健康食品に機能性が表示できる規制緩和を実施することが閣議決定されたのである。これまで機能性を表示できたのは、特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品だけだったのが、15年度以降は一定の基準の下、企業の自己責任によって健康食品にも機能性表示が可能となる。

たとえば、これまではトクホ製品にしか「血圧が気になる方へ」といった表現が使えなかったのが、将来的には、成分の有用性が論文で証明されているなど品質がしっかりしているサプリなどにも同様の表現が適用できるようになるのだ。これには、健康の維持増進に有用なサプリを普及させることで、「セルフメディケーション」の推進を図る狙いが含まれている。

すでに消費者庁は12月17日、新制度設計のために有識者を集めた「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」を設置することを発表、同20日に第一回目の会合を開催した。座長は松澤祐次・住友病院院長(大阪大名誉教授)が務める。

新制度ではサプリなどの健康食品だけに限らず一般の食品、たとえば野菜や鮮魚などにも有用成分が含まれていることが科学的に証明されれば、一定の基準の下、その有用性が明示できるようになる。このため、同検討会では、健康食品に対象を絞らずに「食品」と大きく括っている。ただ、今のところ新制度の大きなターゲットは、健康食品産業における表示規制の緩和である。

この規制緩和の大きな目的は、医療費の削減にある。日本の医療費は、高齢化と国民皆保険制度の下、年々膨張して1年間に約1兆円ずつの歳出増加となり、国家財政を圧迫している。率直に言ってしまえば、自己負担3割で気軽に病院で治療を受けられるので、医師の治療を受けなくてもよい軽度の病気でも病院に行き、病院側も利益のために薬を過度に処方している実態があるのだ。

こうして薬漬けにされた結果、日本人の平均寿命は延びたものの、元気に生活できる「健康寿命」は男性で70・4歳、女性で73・6歳。平均寿命との差は10歳近くも開いてしまった。

この背景には、厚生労働省、製薬メーカー、医師の3者が一体となった「利権」があることも否定できまい。最近露呈した、降圧剤「ディオバン」に関して製薬メーカーと研究者が一体となった臨床データの捏造問題は、業界の癒着構造の一端を示すものであろう。

こうした日本の実態は世界でも異常なことなのである。

誤解のないように断っておくが、筆者は国民皆保険制度を否定しているわけではない。経済的な負担を軽くして誰もが適切な医療を受けることができる制度は維持すべきと考えている。そのためにも、健康保険財政の健全性を維持する必要があるのではないか。国民皆保険制度に安住して病院漬け・薬漬けにして、健康保険財政の悪化を招いている実態を批判しているのである。

ビートたけしが若かりし頃、ツービートの漫才で「看護師が、おばあちゃん今日病院に来てないけど、病気かな?と言ってる」とブラックジョークを飛ばしていたが、もはやそれをジョークとして受け止められないほど健康保険の財政悪化は切実な問題となっている。

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