鈍足の4番打者にして、愛すべき酔っぱらい 阪神タイガース「遠井のゴロちゃん(遠井吾郎)」を語ろう
今週のディープ・ピープル
田淵幸一×江夏豊×川藤幸三

酒を飲むために野球をやった。毎晩飲んで、翌日ヒットを打って、また飲む。口数は少ないが、後輩の面倒見はよかった。そんな男を3人は「兄貴」と慕った。

明日のための酒だった

田淵 俺の阪神での10年間は遠井吾郎さん抜きでは語れない。それくらいかわいがってもらったし、影響を受けたよ。

江夏 俺はアルコールを受け付けない体質だから一緒に飲みに行ったことは何回かしかないけど、田淵と川藤は本当によく連れていってもらってたよな。

川藤 遠井さん言うたらバッティングもすごかったけど、やっぱり酒。

田淵 ああ、365日のうち360日は飲んでいたんじゃない。最初に誘ってもらったのは2年目くらいだったかな。

江夏 田淵は体型も変わっていったよ。

田淵 1~2年目は足が速かったけど、遠井さんと一緒に飲むようになってから遅くなった(笑)。

川藤 最初は細かったのに。

田淵 遠井さんと江夏と俺を合わせた3人で「阪神相撲部屋」と言われたな。

江夏 そうやったな。

田淵 遠井さんは「その晩、飲んで食って遊んだら、次の日の試合では打てよ」というのが口癖だった。それが励みというか、明日もまた誘ってもらえるように俺も頑張ろうとやっていた。

川藤 そうそう。あの人の酒は、いつだって明日への酒だった。「おまえ、明日、ヒットを打つんか」って聞かれて「打ちます」と答えると、「よし、じゃあ飲め」って。「打てるかわかりません」なんて言ったら「おい、帰れ」だった。ただ単に憂さ晴らしをするような酒の飲み方はしない。

田淵 当時はブランデーをよく飲んでいたけど、酔っても乱れることはなかった。

川藤 ワシもよう飲んだけど、遠井さんの酒の強さには負けるな。いったん飲み出したら、お天道さんが上がってくるまで帰らへん。

江夏 別に野球の話になったりはしないんだろ。