東京オリンピックの準備と並行して取り組むべき「危機管理」の考え方
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12月19日、猪瀬東京都知事は、徳洲会から5,000万円を受け取った件で辞任した。2月には、都知事選挙が行われる予定である。知事選挙の争点は、2020年の東京オリンピック、社会保障、防災など多岐にわたるが、まさに、その防災に関連する報告書が、知事辞任と同じ日に公表された。

近い将来に現実のものとなる最悪の事態

政府の中央防災会議の作業部会は、マグニチュード7クラスの首都直下型地震が起きたときの被害想定をまとめた。死者は約2万3000人、負傷者12万3000人、建物の全壊・全焼は約61万棟、経済被害は約95兆円にのぼるという。95兆円というのは、日本国の政府予算の1年分に相当する。驚愕の数字だ。

しかし、2年前の3月11日の東日本大震災を体験し、その被害状況を見た者なら、この数字は現実味を持って認識せざるをえない。あの日、東京でも交通大渋滞が起こり、帰宅困難者が続出した。

とくに冬の夕方に地震が起きると、火災が多発し、それが死者の数を増やす危険性がある。約1万6000人が火災の犠牲になると想定されている。1923年9月1日の関東大震災は、お昼時に発生しており、火を使う時間帯であったことが火災を多発させることにつながった。

東京五輪・パラリンピックの選手村と17の競技施設が新設される臨海地域は埋め立て地が多く、地震の際には津波の心配がある。五輪期間中に大地震に襲われるという最悪の事態を想定して危機のシナリオを書かねばなるまい。

液状化の問題も心配である。五輪の準備と防災対策を並行して行わねばならないので、地震の無い国で開催される場合に比べて、危機管理の態様も異なってくる。2020年には約1500万人の観光客が海外から日本に来ると見積もられている。彼らを無事に避難させることもまた、重要な課題である。

今回の報告書で想定されている事態は、空想の産物ではなく、近い将来に現実のものとなるという実感を全国民がもたなければならない。この想定でさえ甘いと警鐘を鳴らす専門家もいる。

東日本大震災のときに、津波の高さが18メートルになったが、この高さを誰が想定したであろうか。危機を過大に想定して準備するのと、逆に過小評価して準備するのでは、被害が大きく違ってくる。むろん、財政的負担などコストとのバランスということもあろう。

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