企業・経営
名古屋エムケイが痛烈批判!タクシー「値上げ指導」はアベノミクスの規制緩和路線に真っ向から反する

大都市圏で低額運賃のタクシーを投入してきた「MKタクシー」が12月16日、名古屋地区での運賃値上げに踏み切った。名古屋エムケイが国土交通省中部運輸局による運賃値上げの行政指導に「白旗」を上げた結果だ。初乗り400円だった料金を440円とした。名古屋の一般的なタクシーの初乗り料金は500円で、値上げ後も割安だが、同社ではホームページに顧客宛ての「お詫びとご説明」を掲載した。

〈この度の運賃値上げ査定も、一連の再規制による『安くて選ばれるタクシーをなくす』方針の一環であり、全国の低額運賃事業者は次々と値上げを余儀なくされております〉

お詫びの中で同社は、政府の方針を痛烈に批判し、悔しさを滲ませた。名古屋エムケイは2010年にも運輸局から値上げ指導を受けていたが、その際には「利益が十分確保出来ており、値上げの必要がない」として裁判所に訴え、仮認可を求める決定を受けた。価格に敏感な名古屋の利用者の支持を得て、料金据え置きを求める署名活動なども行われた結果だった。だが、今回は司法の場で争うことは困難だとし、指導の受け入れを決めたのだ。

新規参入や増車の禁止。規制再強化に相次ぐ異論

タクシーは2002年に当時の小泉純一郎内閣が掲げた「聖域なき構造改革」の一環として、大幅な規制緩和が実施された。タクシー会社に車両数を増やす「増車」を認めたほか、低額の料金体系の認可も始まった。

ところが、その後の景気低迷で利用者は増えず、「車が増えすぎたため、運転手の歩合収入が大幅に減った」として、規制の強化を求める声が強まっていた。厚生労働省は、2012年度のタクシー運転手の平均労働時間は全業種平均に比べて約1割長いが、年収は6割に満たない296万円にとどまっている、という調査結果もまとめている。「行き過ぎた規制緩和」によって運転手の生活が破壊されているというわけだ。

その結果、リーマンショック後の2009年には、規制は一転して強化される方向へと転換した。低額運賃事業者に値上げの指導をしたり、増車を認めず、むしろ減車する方向に規制のカジを切ったのだ。さらに、指導に従わない事業者には、監査での罰則強化など「圧力」をかけ続けた。名古屋エムケイの言葉を借りれば「(低価格事業者の)ビジネスモデルは真っ向から否定され制限され」るようになったのだ。

さらに、前の臨時国会では、都市部で台数削減をタクシー会社に義務付ける「タクシー減車法案(タクシー適正化・活性化法改正案)」が自民、公明、民主3党の議員立法によって成立した。

来年4月から施行され、国交省が「特定地域」に指定した都市部などの競争が激しい地域では、首長やタクシー会社などで構成される協議会によって、営業台数の削減計画がまとめられ、新規参入や増車が禁止されることになる。

こうした規制再強化の動きに対して、小泉内閣や第1次安倍晋三内閣による規制緩和に賛同していた学者らが12月2日に国会議員会館内で会見を開き、「タクシー規制再強化法案の早急な見直しを求める」とする緊急提言を出した。

提言には、福井秀夫・政策研究大学院大学教授や高橋洋一・嘉悦大学教授、岸博幸・慶應義塾大学教授、八代尚宏・国際基督教大学客員教授、草刈隆郎・日本郵船相談役ら“規制改革派”が名を連ねた。高橋氏は本欄でもタクシー規制について書いている

会見した福井氏らは、行き過ぎた規制緩和によって弊害が生じたという認識は誤りで、むしろ中途半端な規制緩和が弊害を生んだ、と主張した。運賃の認可制が残ったために、十分に価格が下がらず需要が増えないまま供給が増加したというのだ。

運転手の給与が減った問題や、労働環境の悪化に対する対策は、減車による需給規制の強化によってではなく、労働規制や安全規制で対処する問題だとしたのである。そのうえで、法改正は「昭和30年以来の古めかしい規制への回帰にほかならない」と切り捨てた。

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