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医師たちは見た!「あんな死に方だけは嫌だな」壮絶な痛み、薄れていく意識、耐えがたい孤独

苦しまずにぽっくり逝きたい。家族に囲まれながら死にたい。最期は自宅で過ごしたい—そう願っていても「理想の最期」を遂げるのは、そう簡単ではない。医師こそが知る死の現実とは。

切腹より痛い激痛の末に

「こんな凄まじい死に方があるのか、と恐ろしくなりました」

外科医で、特別養護老人ホーム芦花ホーム常勤医師の石飛幸三氏は、目の前でのた打ち回る患者を見て、こう思ったという。

救急車で運ばれてきたのは60代の男性だった。いい大人が涙を流して「ギャーーー」と叫びながら、ベッドの上に寝ていられないほど悶絶している。救急隊員も、いったいこの患者に何が起きているのか、判断がつかなかったという。

病院へ到着すると、今度は嘔吐を繰り返し、血の混じった便もたれ流していた。腹部の検査をしている間、ついに声を上げることもできなくなり、顔面蒼白、手足が冷たくなっていく。呼吸と脈拍が急激に速まって患者はショック状態に陥り、そのまま意識が戻ることなく、帰らぬ人となった。

「急性上腸間膜動脈閉塞症という病気でした。小腸と大腸の一部に酸素や栄養を送る動脈が突然詰まって、我をも失うほどの強烈な痛みが生じる病気です。刃物で腹を切り裂かれたくらいは何ともないと思えるほどに痛むのです。一分一秒を争って治療を行わなければ急速に症状が悪化し、死亡してしまう。

仮に命が助かっても、血流が途絶えたことで腸が壊死して腐っていくため、腸の大半を切除しなくてはいけない。その後は一生、点滴による栄養補給が必要になってしまうんです。あんな死に方だけはしたくないと思いましたね」

もう命が助からないなら、せめて安らかな最期を迎えたい—誰しもがそう思うだろう。しかし、「死」というものほど、理想と現実が大きくかけ離れるものはないという。数々の死に立ち会ってきた医師たちでさえ、こう口を揃える。「大きな声では言えないが、自分の患者さんの最期を見て、死ぬのが心底怖くなることは少なくない」と。理想的な最期を迎えるのは、それほど難しいということなのか。医師が見た「最悪の死に方」の数々を紹介していこう。

日本人の死因1位、がん。毎年およそ36万人ががんを患って亡くなっているが、その中でも「肺がんでは死にたくない」という医師は多い。

「がんの場合、緩和ケアの技術が進んでほとんどの痛みを取ることができるようになっているのですが、いまだに『息苦しさ』を取ることだけはできないんです」(埼玉社会保険病院名誉院長・鈴木裕也医師)

末期になると肺に水が溜まり、いくら息を吸っても呼吸ができず、おぼれているような感覚に襲われる。痛みこそ伴わないが、呼吸が浅く、どんどん速くなっていく。なんとか苦しさを取ろうとモルヒネを大量に投与すれば、意識が戻ることなく死に至ってしまう。