古賀茂明 「特定秘密 その本当の危険性」
古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol075―第1部:日本再生のためにより
【古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol075 目次】

―第1部― 日本再生のために
 1.ネルソン・マンデラさんを悼む
 2.特定秘密 その本当の危険性
 3.みんなの党分裂 江田新党成功のカギは「第4象限の党」
 4.猪瀬都知事と徳州会 5.東国原英夫議員の辞職
 6.公務員の定年延長
―第2部― 読者との対話
―第3部― 古賀さんのスケジュール特定秘密

特定秘密 その本当の危険性

「役所の情報は原則非公開」という現実

特定秘密保護法案の審議の過程で、私が疑問に感じたのは、議論の前提が、「行政情報は原則公開である」となっている点である。

しかし、かつて公務員であった私から見れば、これは殆ど絵空事だ。

普通の企業なら、パソコンを立ち上げて、ワードを開くと、通常は白紙の文書が立ち上がる。しかし、経済産業省では、ワードを立ち上げた時、白紙の文書が立ち上がることはない。右肩に黒字で「機密性」という3文字が最初から打ち込まれて出てくる。システム上、そのように設定されているのだ。

従って、公開文書にするには、文書作成者が、わざわざ「機密性」の3文字を削除しなければならない。このシステムでは、うっかり忘れても自動的に秘密になる。つまり、全ての文書は原則秘密で、公開はあくまでも例外なのだ。

だから、特定秘密保護法ができても、行政情報の中で、秘密が増えることはないというのが実情だ。今でも殆どの情報が秘密なのである。

また、情報公開法では、国民は、役所に情報の公開を求めることができるが、実際にやってみると、多くの場合、要求した文書について、「不存在」と言われることが多い。特に会議の議事録がないということが極めて多い。これは、どんなに重要な政策決定でも、途中の議論の過程で議事録を作ることが義務付けられていないからである。議事録がないので、公開したくてもできない、というのが役所の言い訳だ。

もう一つ、政策決定途上の議論については、公表しなくてもよいことになっている。途中の議論は二転三転することが多いし、会議は無数にあるので、それをいちいち記録していては大変だというのが理由だ。公開されると、率直な議論ができなくなるという理由も挙げられている。

しかし、これでは、例えば、今回の特定秘密保護法案の策定過程で、どの役所の誰がイニシアティブをとったのか、というような重要な情報が出て来ない。秘密の範囲を拡大することに賛成だったのは公安当局だということがわかれば、彼らによって乱用される危険性が大きいことがわかるはずだが、そんなことは、請求しても出てこないのだ。

このような現実を前提にすれば、我々が真っ先に考えるべきことは、原則非公開の役所の情報をどうやって公開させるのかということになる。秘密保護の強化はその後の議論だ。百歩譲っても、それらを同時に議論するべきだということになる。

(略)

日本版NSC法案の最大の問題点

特定秘密保護法に先立って、先国会では、国家安全保障会議法も成立している。外交・安全保障政策の基本方針や中長期的な戦略を決めるためとしているが、緊急事態への対応を強化するため、首相が指定する閣僚らによる緊急事態会合も新設することになっている。
後者の方が重要な意味を持つのは明らかだ。戦争をするかしないか、というような国民の命に直接かかわる事項を扱うことになるからである。

この法案の審議の過程で、会合の議事録作成を義務付けるべきだという議論があったのを覚えている方も多いだろう。実は、これがあるかないかは、国民にとって、死活的に重要なことなのだが、マスコミは単に知る権利とか、歴史的検証ができないなどという視点でしか理解せず、大きな争点にならないまま法律になってしまった。アリバイ作り程度に、衆参両院の国家安全保障特別委員会は、政府に議事録作成の「検討」を求める付帯決議を採択しただけだった。

しかし、前述したとおり、大臣や官僚が情報を隠すために最も多用するのが、「議事録がありません」という言い訳だ。福島の原発事故後の官邸の対応について、検証しようとしても殆どの会議の議事録がないことから、結局どこに問題があったのか、誰に責任があるのかということは、曖昧なままとなっている。これによって、今日に至るまで、政府の中で誰一人として責任を取っていないことを見れば、議事録作成がいかに重要なことかがわかるはずだ。・・・・・・