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インサイド・レポート「ナンバー2」失脚は金王朝崩壊の始まり 金 正恩は朝鮮人民軍に暗殺される

政権を引き継いで丸2年、ついに金正恩王朝の崩壊が始まった。当時、金正日総書記の霊柩車を引いた「忠臣7人組」のうち、5人目となる張成沢の失脚だ。衝撃ニュースの裏で何が起こっているのか。

「先月会ったばかり」

「まったく青天の霹靂で、にわかには信じられません。何と言っても、私は先月6日に平壌でお会いしたばかりなんですから」

こう驚きを隠せないのは、日本体育大学理事長の松浪健四郎氏だ。

12 月3日、韓国発で衝撃的なニュースが飛び込んできた。故・金正日総書記の妹・金敬姫書記の夫で、北朝鮮の実質上のナンバー2である張成沢国防委副委員長 (党行政部長)が失脚したというのだ。加えて、張副委員長の腹心の部下だった李竜河朝鮮労働党中央行政部第一副部長と、張秀吉同副部長の両幹部が、公開処 刑に処せられたという。

松浪氏が続ける。

「私は日体大と北朝鮮とのスポーツ交流で訪朝し、先方の国家体育指導者委員会の委員長が張成沢氏でした。彼と会うのは昨年に続き2度目だったのですが、会うなり、『東京オリンピックの開催おめでとう』と言われました。

その後、一緒に女子バスケの試合を観戦しましたが、張氏は日本人選手の動きをほめまくっていました。最後は、『わが国は常にオープンであり、日本の多方面の方々を歓迎します』と言われました。金正恩第一書記についての言及はありませんでした」

張成沢を13年間にわたって間近で見てきた「金正日の料理人」藤本健二氏も、驚きを隠せない。

「張 成沢部長とは、昨年7月に訪朝した際、金正恩第一書記とともにランチをご一緒しました。『裏切り者の私を殴ってください』と私が言ったら、『もうよい、最 高司令官同志(金正恩)が、ずっとお前の帰りを待ちわびておられたぞ』と言って、両手で握手してくれました。それは、私が長年接してきた北朝鮮ナンバー2 の姿でした」

北朝鮮において張成沢副委員長は、改革派のリーダーと見られていた。

中国の外交関係者が語る。

「金 正恩政権のスローガンは『経済発展と核大国』だが、経済発展の担当責任者が張成沢だった。張は頻繁に訪中し、『わが国も中国を見習って経済発展したい』と いうのが口癖だった。昨年8月に最後に訪中した際には、『新たな指導者(金正恩)を訪中させたいので、中国式の経済発展を直接、促してやってほしい』と 言っていた」

そんな張成沢副委員長はこの春以降、勝負に出た。同関係者が続ける。

「中国が経済特区の指導をして、5月に経済開発区法を制定したのに続き、10月下旬には、国内14ヵ所に、中国式の経済特区を設置することを決めたのだ。この経済特区のポイントは、中国などから外資を誘致し、民間主導で都市の経済発展を図るというものだった。

これに真っ向から噛みついたのが、120万朝鮮人民軍だった。朝鮮では、インフラ建設は軍の独占的利権だ。それを切り崩されたら、軍の大幅削減は必至なので、軍が焦燥感を募らせたのだ」

そこへきて、張成沢副委員長に、不幸が重なったという。

「それは、金敬姫書記の健康問題だ。2年前の12月に独裁者だった金正日総書記が死去した後、金正恩第一書記が直ちに後継者となったが、黒幕は金敬姫だった。

過去2年間の重要人事はすべて、金敬姫の意のままだったと言っても過言ではない。金正恩も張成沢も、金敬姫あってのナンバー1でありナンバー2だった。その金敬姫が、持病の糖尿病を悪化させ、絶体絶命のピンチに陥っているのだ」(同関係者)

金敬姫書記の強大な権力については、前出の藤本氏も、長年にわたって間近で見てきたという。

「平壌の〝奥の院〟では、金正日と妹の金敬姫は、完全に同等と見られていました。金正日は唯一の兄妹である敬姫がかわいくて仕方なく、敬姫にせがまれると、どんなわがままでも聞いていたからです。

金 敬姫は酒好きで、宴会では自分の夫を、『張成沢!』と呼びつけ、洋酒の一気飲みをさせていました。張成沢は、婿としての自己の立場をわきまえていて、常に 控え目に振る舞っていた。自分がトップに立とうという野心がない分、金正日総書記の最側近という不動の地位を固めていたのです。

幹部たちは、そんな張成沢に対しても、『張部長同志』と呼んでペコペコしていました。しかしそれ以上に、金敬姫に対しては、絶対的な敬意を表していたのです」

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