毎日フォーラム~毎日新聞社

杉並区が静岡県に移住型の特養計画
急増する都市部の介護需要 国は「自治体間交流」に限定容認[高齢者対策]

2013年12月15日(日) 毎日フォーラム
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東京都杉並区が区の高齢者を優先して受け入れる地方移住型の特別養護老人ホームを静岡県南伊豆町に整備する構想が注目を浴びている。政府は都県をまたぐ移住型特養を限定的な形で後押しする方針だ。大都市圏の介護需要が急増する中、地方による受け入れをどう位置づけるかが重い課題となっている。

杉並区の構想は南伊豆町の海岸に近い同区の健康学園跡地に60~80人が入居できる特養を同町と協力して整備、区民を優先入所させる。早ければ2016年度の開所を目指しており、静岡県も交えて調整を進めている。

東京23区の特養への入居者受け入れは用地確保の難航などから深刻な状態を来しており、杉並区も約2000人が待機する。そこで40年近い自治体間の交流実績を持つ南伊豆町に保養地型特養の整備を着想した。

南伊豆町も特養整備に伴う雇用効果が期待できるメリットがある。多くの町村と同様、人口減少に歯止めがかからず住民1万人を割り込む中で特養整備による「ウイン・ウイン」の関係を目指すことで思惑が一致した。

介護保険では高齢者が移住して特養や有料老人ホームに入所した場合、移住元が財政負担をする「住所地特例」制度がある。杉並区は後期高齢者医療の負担なども特例が必要として制度改正を国に要望した。

また、山形県舟形町や茨城県かすみがうら市のように大都市圏の高齢者の介護需要の受け皿として名乗りを上げたり、構想に着手したりする自治体もある。政府の産業競争力会議が注目したこともあり、移住型特養の全国展開や後押しが可能か、厚生労働省の有識者会議「都市部の高齢化対策に関する検討会」(座長・大森彌東京大名誉教授)による議論が重ねられた。

だが、検討会での議論は移住型特養への後押しよりも慎重論の方がむしろ優勢となった。特養は寝たきりや認知症など、常に介護が必要な高齢者が対象だ。それだけに、住み慣れた地域を離れて高齢者が特養に強制移住させられる、いわゆる「姥捨て」への懸念は根強かった。

加えて同省は「地域包括ケアシステム」というコンセプトで介護、医療、生活支援を連携させ、住み慣れた地域での福祉を充実させる構想を進めている。移住型特養の方向性はこれと衝突しかねない事情もあった。

結局、検討会がまとめた報告書は都県をまたぐような地方移住型特養について「自治体間の交流実績」を条件に容認し、不特定多数から受け入れるような場合は「慎重に検討すべき」と一線を引いた。杉並、南伊豆のようなケースに限定して制度支援を特例的に認めたと言える。さらに東京都については特養を整備する区域単位である「圏域」間で整備を調整しあうことも都内であれば可能とした。東京都で圏域は複数の区や市単位で構成され23区で7圏域、都全体で13圏域が設定されている。

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