スポーツ特別読み物 プロゴルファーの生き残り競争こんなに厳しい
シード権を失うことは生活を失うこと脚光を浴びる選手はわずか3%

今年も華やかな賞金王争いの陰で、来季のシード権をかけたサバイバルレースが繰り広げられていた。シード権を確保できるかどうかで来年の生活が決まる。失った者には厳しい現実が待っていた。

大会に出場できない

「ここからじゃもうグリーンに乗せられない。拾ってくれ」

11月28日、海からの寒風舞うKochi黒潮カントリークラブ(高知県)で行われたカシオワールドオープンゴルフトーナメント初日、最終9番ホールの出来事だった。室田淳のセカンドショットが大きくグリーンを外れギャラリーのほうに転がっていった。ここまで室田は9オーバー。もはや挽回は不可能と感じたのだろう。キャディーにボールを拾わせ、「ギブアップ」を宣言した。

ホールを離れクラブハウスに向かう室田に一人のファンがサインを求め駆け寄った。

「サインはしない、俺はもうプロゴルファーじゃないから」

そう言って、室田はその場を立ち去った。室田のプライドを懸けたシード権争いは、こうして終わった。それは同時に、来年の生活の糧、収入を失うことも意味していた。

このトーナメント上位では松山英樹とキム・ヒョンソンが賞金王に向け鎬を削っていた。華やかな賞金王争いを「光」とするならば、シード権争いはまさにプロゴルフの「影」の側面である。毎年この時期に行われるカシオワールドオープンは、来年のシード権を争う最後の大会となる。

冒頭の室田の賞金ランクは838万335円で84位。

対して来年のツアー参加資格をえられるシード権獲得選手は賞金ランク上位72名まで(本来は70位だが、今年はランク上位に出場義務試合数が不足している選手が2名いるため)。

72位のジャン・ドンキュとの差は約353万円。逆転してシード権を確保するためには、室田はこの最終戦で何としても、単独14位以上に入らなければならなかった。

'10年からカシオワールドオープンの解説をしているプロゴルファーの加瀬秀樹が、この大会に臨む選手の心境を忖度する。

「私なんかでも、この時期はシード権のボーダーライン上にいる選手とはなかなかうまく言葉を交わせない。練習ラウンドから、普段とは違うピリピリした緊張感が伝わってくる。会話を交わす選手も少なく、当落線上の選手に『頑張れ』と口にすることさえはばかられる雰囲気がある」