首相の人事介入に機先を制し松本会長が退任表明。「自己規制」を生みかねないNHK会長人事はメディア全体の問題だ

特定秘密保護法案の可決強行騒ぎで政治が揺れる中で、NHK会長の松本正之氏が退任の意向を表明した。

松本氏は受信料の引き下げとNHK職員の賃下げを実現した功績を評価されており、通常ならば続投を要請されてもおかしくない状況だった。

しかし、すでに、松本更迭を目指す安倍晋三政権に会長の人事権を持つ経営委員会を掌握されているため、首相の〝NHK会長人事への介入〟という悪例を招く前に、機先を制して身を引いた格好だ。

これによって目先の混乱は回避されるかもしれないが、事態はむしろ悪化している。安倍政権が「言論の自由」の制約に向けて大きな布石を打ったと言わざるを得ないからだ。

更迭や解任避け、自ら身を引く「功労者」

「(来月24日までの)任期満了後は経営委員会でいい方を選んでいただくのがいい。私は(その候補に)入っていないと思っている」

NHKの松本会長は先週5日の定例会長会見でこう語り、続投の意思がないことを明らかにした。

会長人事を巡っては、任命権を持つ経営委員会が、候補者の一人として松本会長の業績評価を行ったうえで、他の候補者と比較し、最終的な絞り込みを行う手はずになっていた。

前任者が迫られた満額ではないとはいえ、松本会長が、これまで歴代会長の誰も実現できなかった受信料の引き下げやNHK職員の報酬の引き下げを実現した功績は大きい。

が、8月の本コラムで新聞やテレビに先駆けて指摘したように、再任に向けて、松本氏は四面楚歌だった。というのは、安倍政権が日銀、内閣法制局長官人事でもみせたように、民主党政権が任命した主要な公職人事の刷新を最優先しているからだ。

すでに、安倍内閣は政権取得後に、12人の経営委員のうち10人を承認した。10人には、首相にも太いパイプを持つ浜田委員長ら一部の委員が再任されたほか、思想的に首相に近い首相自身の個人的な知己が新たに選任された。このため、首相の意に沿う人物を会長に据えるのに必要な9人の賛成票の確保が容易とみられていた。

2011年の会長人事の混迷を受けて、松本氏擁立に奔走した鉄道会社幹部と、松本氏の軋轢も少なからず影を落としたとされる。こうした状況を踏まえて、更迭や解任という事態を招いて再び混乱が起きる前に、松本氏は自ら身を引いたものとみられている。

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