官々愕々 完成間近「公務員のための公務員改革」
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特定秘密保護法案や中国の防空識別圏設定などのニュースの陰で、また、驚くような事態が進行している。

今秋の臨時国会に提出された国家公務員制度改正法案の問題点については、10月の本コラムでお伝えしたが、幸か不幸か、この法案は、時間切れ不成立となった。「来年の通常国会までにまともな内容に修正できないか」と考えていたら、12月3日、「自民、公明、民主三党が修正合意」というニュースが流れた。

しかし、「修正」どころか実態は全く逆。何と公務員の定年(現行60歳)を65歳まで段階的に引き上げるというのである。

年金支給開始年齢の引き上げに沿った措置だからよいのでは、と思う人もいるだろう。しかし、よく考えてみると極めておかしい。

まず、年金の支給開始年齢の引き上げは、官民共通の話だ。国は、民間企業などに、三つの選択肢、すなわち、定年廃止、支給開始年齢引き上げにあわせた定年の65歳までの引き上げ、再雇用制度による雇用延長、いずれかの方策で年金支給開始まで所得保障することを義務付けた。

これを受けて、大半の企業は再雇用制度を選んだ。定年引き上げのコストに耐えられないからだ。再雇用制度では、給与をピーク時の半分以下、さらには3割程度にカットという企業が多い。実は、公務員にもほぼ同じ制度があるから、その制度を使えば済むはずだ。

公務員給与の原資は税金だ。「民間労働者は再雇用制度で給与大幅減なのに公務員は定年延長で高給」というわけにはいかないということで定年延長は見送られてきた。公務員にとってその実現は悲願だ。

民間では、50歳くらいから給料は上がらないどころか下がるところも多い。60歳の定年の時の給料が低いから、その給与に比べればカット率は低く出る。一方、公務員は、一度上がったら絶対に給料は下がらないから60歳の給与は生涯給与のピークである。おそらく、官僚は、定年延長しても給料は民間企業並みの「カット率」にするというロジックを使うだろう。しかし、非常に高くなったピークの給料から例えば3割カットなどと言っても、1200万円の課長だったら800万円以上の高給になる。

もう一つおかしな点がある。民間では、正規雇用から非正規雇用へのシフトが続き、雇用の保障がどんどん弱まっている。一方、公務員だけは雇用の保障が強化されるということになる。

さらにもう一点。政府は、規制改革で、民間企業が労働者を解雇しやすい制度にしようと考えている。一方で公務員は、今でも手厚い身分保障があって、犯罪でも犯さない限りクビにはならない。今回の法案でも、その改革は見事に骨抜きとなった。

この法案には、公務員の身分を維持したまま企業や団体に出向して給料をもらうという事実上の天下りを拡大する方策も盛り込まれた。50歳前後から、用なしとなった官僚が、現役のまま所管企業などに出向して、その企業に高い給料を払わせるのだ。

来年4月、消費税増税とともに、東日本大震災の復興財源への協力と称して導入された公務員の給与カット措置が終了し、7・8%給料が上がる。元々民間より高すぎるから恒久的に大幅カットすべきだったのに、震災にかこつけて時限措置にしてしまった。財源はもちろん消費税増税分ということだ。

安倍政権安定は官僚のおかげだ。彼らに報いたいという自公政権と公務員組合べったりの民主党が談合すれば何でもできる。

『国民のための』公務員改革は頓挫し、『公務員のための』公務員改革が完成間近となっている。

『週刊現代』2013年12月21日号より

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