FOOTBALL STANDARD

二宮寿朗「Jリーグにも“カムバック賞”を」

2013年12月04日(水) 二宮 寿朗

 谷沢健一(1980年、中日)、村田兆治(85年、ロッテ)、津田恒実(86年、広島)、前田智徳(02年、広島)、小久保裕紀(04年、巨人)、大竹寛(12年、広島)……。
 のっけからプロ野球の話題で恐縮だが、これって何だか分かります?

 勘のいい野球ファンなら谷沢、村田と来た辺りですぐにピンと来たのではあるまいか。ケガや病気を克服して復活を遂げた選手に贈られる「カムバック賞」の受賞者たちである。

 個人的に思い入れが強かったのは、99年の遠山奬志。阪神タイガースに入団した86年に先発の一角に入って8勝を挙げたものの、翌年にケガをして以降は鳴かず飛ばず。移籍した千葉ロッテマリーンズでは打者に転向した。ロッテを自由契約となり、古巣の阪神に復帰。再び投手に戻り、ワンポイントリリーフとして復活を遂げたのである。10年以上かけての復活劇に、阪神ファンのみならず、多くの野球ファンから拍手を送られた。

復活遂げた米本の涙

 日本プロ野球のカムバック賞は元来、MLBに倣ってのもの。MLBで公式に表彰が行なわれるようになったのは05年からだが、65年より制定されている。アメリカではMLBのみならず、アメフトのNFL、サッカーのMLSでも設けられてきた。

 現在、Jリーグに「カムバック賞」はない。リーグ20周年を迎え、個人的にはそろそろ検討してもいいのでは、とずっと思っている。復活した選手の活躍を称えるのみならず、同じような境遇にある選手たちにとっても励みになるからだ。

 そんな思いを一層強くしたのが昨シーズンだった。2度の左ひざ前十字じん帯損傷という大ケガに見舞われながらも、手術と長いリハビリを終えて復活を遂げたFC東京の若きボランチ、米本拓司の存在があったからである。

 ちょっと前の話になってしまうが、実に印象的だったのが11カ月ぶりにホーム・味の素スタジアムのピッチに立った開幕2戦目の名古屋グランパス戦(12年3月17日)。終了間際になって米本が途中出場すると、会場は割れんばかりの歓声が起こった。

 試合後、サポーター席に挨拶に出向いた米本は泣いていた。普段はあまり感情を見せない男が、下を向いたまま顔を上げられなかった。それほどの苦しみを経て、ここに戻ってきたという喜びがあったに違いなかった。

 あのリスタート以降、彼はレギュラーの座を守り、チームの中心選手として存在感を発揮。「カムバック賞」があれば、十分に値するパフォーマンスだった。もちろん今シーズンも不動のボランチとして、より輝きを放っている。

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