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いまがよければそれでいい、では済まない「原発のゴミ」捨てる場所がないと最後はこうなる
わき上がる待望論 小泉純一郎を「原発ゼロ特命大臣」に!

日本には放射線廃棄物の最終処分場は作れない—。小泉純一郎元首相の言う通り、これは紛れもない事実だ。立命館大学名誉教授で放射線防護学が専門の安斎育郎氏はこう語る。

「小泉氏は今年の夏に、フィンランドにある放射性廃棄物の最終処分場・オンカロを見て原発は即時ゼロにすべきと思ったと言っていますが、これは納得できる話です。

フィンランドには原発が4基ありますが、オンカロは2基分しか用地がない。それに対し、日本には54基もの原発があるにもかかわらず、最終処分場は一ヵ所もありません。オンカロもそうですが、放射性廃棄物の処分場は、地下300mより深くの、硬い岩盤の地層に埋める『地層処分』が主流です。4つのプレートがせめぎあい、活断層が2000本ある日本には、オンカロのような頑強な地層はどこにもありません。最終処分場を作ることは不可能です」

安斎氏は、40年以上にわたって反原発の姿勢を貫き、放射性廃棄物の処分の問題について訴えてきた。

「廃棄物に含まれるプルトニウムの半減期は約2万4000年。放出される放射線が10分の1より少なくなるまでに10万年近くかかる。『ここが危険な場所である』と、将来世代にどう伝えるのか。考えてもみてください。いまから10万年前はネアンデルタール人が歩いていた時代ですよ」

いままで政府は、原子力発電が安全でローコストな「夢のエネルギー」だという大嘘を言い続けてきた。その根拠としていたのが、「核燃料サイクル」だ。核燃料サイクルとは、使用済み燃料棒から再処理施設でプルトニウムとウランを分離し、それらを再利用するというサイクルのこと。政府や原発ムラの電力会社などは、その過程で高レベルの放射性廃棄物という厄介な「原発のゴミ」が生まれる問題を、国民にほとんどアナウンスしてこなかった。

何の使い道もないが、高い放射線を何万年も撒き散らし続ける高レベル放射性廃棄物は、日本の法律では、ガラスで固められ「ガラス固化体」として地下で処分されることになっている。

固化直後のガラス固化体の表面の温度は200℃以上。放射線量は、表面の位置に人間がいたと仮定すると、毎時1500シーベルトにもなる。これは人間の被曝致死量である7シーベルトを、わずか20秒で浴びてしまうレベルである。

だからこそ、放射線を遮断する容器に格納し、地下深くに処分するように定められているのだ。

だが実際には最終処分場がないばかりか、そのガラス固化すら国内ではできない。日本唯一の再処理場である青森県六ヶ所村の再処理工場は、当初の計画通りにはいかず、現在は試運転の状態だ。全国から集められた使用済み燃料を貯蔵するための3000tの容量を誇るプールはすでに98%が埋まっており、維持するだけで毎年1100億円もの費用を食い潰している。

そのため、一度フランスやイギリスに高レベル放射性廃棄物を海路で輸送し、ガラス固化体として処理しているのが現状だ。そして海外から再び、原発のゴミは六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターに運び込まれる。現在でも1500本近いガラス固化体を保管中。この六ヶ所村の再処理工場、管理センターなどの「原子燃料サイクル施設」には、これまで累計で19兆円もの費用が投じられてきた

「原子力発電はローコスト」という原発ムラの主張は、まったく馬鹿げたものだったのだ。

最悪なのは、もし六ヶ所村の再処理工場で、3・11直後のような事故が起こったら、というシナリオだ。使用済み燃料も発熱するため、プール内で冷却し続ける必要がある。地震などで電源喪失し、冷却機能が失われたとすると、プールが干上がり、臨界や水素爆発、そして核爆発につながる恐れもある。

原爆の原料であるプルトニウムが大量に保管された再処理場が爆発すれば、日本どころか、北半球全体が放射能で汚染される事態も考えられるのだ。

その上、あくまでも六ヶ所村の管理センターは「中間貯蔵施設」でしかない。岐阜県に瑞浪超深地層研究所、北海道に幌延深地層研究センターと、地層処分を研究する施設はあるが、これらも「研究」施設にすぎない。元東芝の原子炉格納容器設計者である、後藤政志氏は言う。

「最終処分場どころか、再処理施設も、中間管理施設も足りていない。原発の貯蔵プールや中間貯蔵施設に貯蔵している間に、放射性廃棄物の処理法を考えるしかありませんが、現実は待ってはくれない。

11月18日に、東電は福島第一原発4号機内の燃料棒を取り出す作業を開始しました。壊れた原子炉から燃料棒を取り出すという、世界的に見ても歴史上初の非常にリスクが高い作業です。しかし、そうして危険をおかして取り出したところで結局行き場はない。原発施設内の共用プールで保管するしかないのです」

野晒しになる

原発が稼働し続ければ、毎年生じる使用済み核燃料は、合計で1000tを超える。原子燃料サイクル施設の貯蔵プールはほぼ埋まっており、各地の原発の貯蔵プールも厳しい状況だ。柏崎刈羽原発はあと約3年分、浜岡原発は約6年分しか、自らの使用済み燃料棒を保存できるスペースは残されていない。

海外での最終処分という案もある。しかし過去、モンゴルの最終処分場での処分計画はモンゴル政府から拒否され、ロシアなど、国内への放射性廃棄物の受け入れを禁じている国も多い。

結局、日本で生まれた原発のゴミは自国で責任をもって処分するしかない。地下に埋める処分場がない以上、どこかの地表に置かざるをえなくなる。最初は国有地などで、隔離され、管理されるだろう。しかし、それが当たり前になれば、増え続ける放射性廃棄物は溢れかえり、日本の各地に広がっていかざるをえない。そうなったとき、すべてに管理の手が行き届くかどうかは疑問だ。

究極的には、放射線をまき散らす高レベルの放射性廃棄物が、山林や海に投棄された廃車やドラム缶のように、野晒しにされた光景が現実のものになるかもしれないのだ。

最終処分場の問題について原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏に尋ねたところ、なんとも頼りのない答えが返ってきた。

「最新の科学的知見を踏まえ、処分場の選定を見直す作業を経産省で行っています。科学者の中でも『候補地は見つかる』という議論をして頂くことが大切です」

地層処分以外の方式も、かねて考案されてきた。「海洋投棄」や「宇宙投棄」などの方法だ。しかし、前者は'93年に国際的に禁止され、後者はコスト面の問題や、事故災害の可能性もあり現実的ではない。獨協医科大学准教授で、放射線衛生学が専門の木村真三氏は言う。

「福島第一原発周辺には、どう除染をしても、人が帰れないほどに汚染された地区がある。そこを最終処分場にするしかない。帰宅困難な被災者にとっては辛いことですが、帰れないものは帰れないと伝え、未来に向けて歩き出すしかないのです。しかし現状では効果の低い除染を進めてポーズだけを示し、政府は年間の被曝許容量を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトまで上げようとしている。正気とは思えません。

10万年後までに技術が進歩し、放射性廃棄物の処分の問題が解決するという人もいます。しかしそれは、人類が銀河系の外に飛び出す『スタートレック』のような世界を待ちましょうという話。原発を止めるのとどちらが現実的なのかは、誰が考えても分かることです」

これ以上、ツケを将来に回してはならない。

「週刊現代」2013年12月7日号より

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