矢野隆司 第1回 「『極道辻説法』の「和尚前白」はシマジさんがちゃっかり先生になり代わって書いていたんです」

撮影:立木義浩

<店主前曰>
矢野隆司とわたしは20も歳が離れているが、40年以上仲良くしている。二人の関係は矢野の"じかあたり"からはじまった。

まだ十代だった矢野青年は、週刊プレイボーイの人気連載、今東光大僧正の『極道辻説法』の熱狂的な読者だった。大阪在住の矢野は今東光大僧正の魅力を知りたいがために、わざわざ上京して集英社にシマジを訪ねてきた。連載で「シマジ、シマジ」と今先生がよくいっておられたから、矢野はシマジと会ってみたくなったのだろう。

行動の人、矢野隆司は礼儀正しく育ちのよさが滲みでていた。それから定期的に会うようになり、上野寛永寺にある今先生の墓参りにも何度か一緒に行った。佐倉の未亡人にも紹介したが、矢野はとてもきよ夫人に可愛がられた。生前の大僧正に会ってもいないのに、矢野は今家のためにいろいろ世話をし何かと尽くした。

関西学院大学を卒業すると矢野は神戸新聞の記者になった。輝ける数々のスクープを放った後、実家である水道関係の大手、大成機工に入社した。いまはそこで副会長になっているが、小泉チルドレンの一人に選ばれ衆議院議員を一期やったこともある。また今東光研究家として北海道在住の湊幸雄とともに『慧相』を発行し健筆を振るっている。

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シマジ 矢野ちゃん、久しぶりだね。矢野ちゃんは、夕方になると「またあいつと飲みたいなあ」といつも思い出す男の一人だよ。

矢野 もう40年以上お付き合いさせていただいておりますのでシマジさん独特のレトリックにはかなり免疫力がついていますが、こうして直接そういわれるとやっぱりうれしいですね。立木さん、お久しぶりです。うちのオヤジの写真を撮っていただいたとき以来ですね。その節は大変お世話になりました。

立木 お父さんは元気?

矢野 もう歳ですが、お陰さまで何とか元気です。

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シマジ 矢野ちゃんのお父さんは面白い人でおれと気が合うんだ。

セオ お父さまはまだ現役なんですか?

矢野 はい、会長をしております。

セオ 社長は?

矢野 社長は一族以外の方が継いでおります。