The New York Times

フランス国債の格下げについての陰謀

『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より

2013年12月10日(火) ポール・クルーグマン
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〔PHOTO〕gettyimages

政治的文脈によって格下げとなった

11月8日、債権格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がフランスの格付けを下げた。これが重大ニュースとなり、フランスは危機的状況のようだ、と大々的に報じられた。しかし、市場はあくび。フランスの史上最低に近い借入コストは、ほとんど動かなかった。

これは一体どういうことなのか。答えは、S&Pの行為は、金融引き締めを取り巻く、政治的文脈の中で見る必要があるということだ。つまり格下げは経済ではなく政治だ、という意味である。

このフランスに対する陰謀(実に多くの人がフランスの悪口を言うので、私は冗談半分でこう言うが)は、ヨーロッパでもアメリカと同様に、財政にガミガミ言う連中は、本当のところは、財政赤字の問題を気にしていないという明白な証拠である。その代わり連中は、債務への恐怖をイデオロギー的な行動計画の実践のために利用している。そしてそれに同調しないフランスは、絶えず否定的なプロパガンダの標的となってきた。

ドイツよりも生産性の高いフランスの労働者

何のことなのかちょっと説明しよう。1年前にエコノミスト誌は、フランスは「ヨーロッパのど真ん中にある時限爆弾」で、それに較べたらギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアなどの問題は取るに足りないと言明した。2013年の1月には、CNNマネーのシニアエディターが、フランスは「自由落下」中で「経済的なバスティーユ牢獄に向かっている」と断言した。同様の所感は、あらゆる経済のニュースレターでも見られた。

こうした表現が飛び交うからには、フランスのデータは最悪に違いないと思うだろう。しかし別格のドイツをのぞき、実際は、フランスは経済的困難を経験しながらも、一般的に近隣諸国と同様か、それ以上のパフォーマンスを上げている国だ。

最近のフランスの成長は鈍いが、たとえば、いまだAAAに格付けされているオランダよりは、ずいぶん上等だ。そして標準推定によると、12年前のフランスの労働者は、実際のところ、ドイツの労働者より少しばかり生産性が高く、意外にも今もってそうだと言う。

また一方で、フランスの財政の見通しには、まったく問題がない。財政赤字は2010年以降急減し、IMFは、フランスの債務対GDP比は今後5年間にわたり、おおよそ安定状態が続くと予想している。

セーフティ・ネットの解体を求めた欧州連合

人口の高齢化という長期的な負担はどうか。これはほかの富める国と同様に、フランスにとっても問題だ。しかし政府の綱領が出産を奨励し、働く女性の生活を支援したこともあって、出生率はヨーロッパの大部分の国よりも高い。その結果、人口の見通しは、ドイツを含めた近隣諸国よりも遙かに良好だ。同時に、フランスの健康保険制度は、低コストで高いクオリティーのサービスを提供しており、今後、これは財政上の大きな利点となるだろう。

次ページ ということで、数字の面では、フ…
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