防衛・安全保障 中国
尖閣問題は次のステージに突入!? 人民解放軍の要求をのみ防空識別圏の設置と空母による軍事演習にゴーサインを出した習近平
〔PHOTO〕gettyimages

何かと「秘密条項」の多い非民主国家である中国の動向を見る上で大事なのは、「流れ」を読むことである。世界最大規模の国家であるから、細部は不明でも、大枠は隠せない。換言すれば、中国という巨艦の操舵室は覗けなくても、巨艦がどちらの方向へ向かってどんな速度で動いているかということは識別可能なのである。

だいぶ前置きが長くなってしまったが、11月23日に中国国防部が防空識別圏を設置したことで、日本は大騒ぎになっている。この突然降って湧いた中国の動きをどう捉えたらよいのだろうか。

追い詰められた人民解放軍による突き上げ

中国政界の2013年後半のスケジュールで言えば、圧倒的に大事だったのは、11月12日に閉幕した「三中全会」(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)である。ここで採択された「公報」(コミュニケ)の分析は、前々回のコラムを参照してほしいが、この公報に書かれた事項が、今後の習近平政権の施政方針である。

それは一言で言えば、中国語の美辞麗句で覆われた見事な玉虫色の文章だった。皆にそこそこいい顔をしながら、その実どの分野にも突出した決定を行っていない。いかにも中国的と言えば中国的だが、実際にはおのおの利益集団が、「われわれの主張は共産党中央のお墨付きを得た」と解釈した。

そのため李克強首相は、11月25日から29日までルーマニアとウズベキスタンを訪れ、より一層の経済開放や中国企業の海外進出の推進へ邁進していった。

一方、その正反対の方向へ邁進していったのが、人民解放軍である。人民解放軍にとって、李克強首相が「第二の鄧小平」となって改革開放政策を進化発展させていくことは、恐怖である。

なぜなら、かつて鄧小平が改革開放に伴って軍人を150万人も削減したように、数十万人規模の軍人削減を求められるのは必至だからだ。

「アメリカでさえ1割近くも軍事予算を削減し、国境を接する14ヵ国はいずれも脅威でないのに、なぜ230万もの巨大な軍が必要なの?」と責め立てられるのは目に見えている。そのため至急、存在意義を示す行動に出ることが必要だったのである。

ただでさえ、最近の人民解放軍の士気は沈滞しているという。それは一つには、習近平が昨年12月に出した「八項規定」(贅沢禁止令)により、「腐敗の巣窟」と揶揄されてきた人民解放軍に、徹底した軍紀粛正が求められるようになったからだ。軍部隊によるビジネスも蓄財も禁止され、「宴会がお仕事」などと言われ、羨望の的だった人民解放軍は、すっかり意気消沈してしまったのである。

もう一つは、10月24日と25日に習近平主席が開催した「周辺外交工作座談会」の影響である。この会議を開いた最大の理由は、李克強首相に率いられた「団派」(共産主義青年団出身幹部グループ)に、説き伏せられたからである。

TPPが急速に妥結に向かっており、このままでは中国は経済的に孤立してしまう、ついては持続的な経済発展のために、周辺諸国との友好親善が必要だという、まっとうな論理である。だが、「仮想敵国」である日本やフィリピンなどが、「友好国」に変わっていけば、陸の国境に加えて海の国境も平和になるから、ますます巨大な軍隊はお荷物ということになってしまう。

そのようなわけで、追い詰められた人民解放軍が、習近平を強く突き上げたのである。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら