佐藤優の読書ノート---クリスティア・フリーランド著 『グローバル・スーパーリッチ――超格差の時代』ほか

クリスティア・フリーランド(中島由華訳)
グローバル・スーパーリッチ――超格差の時代』早川書房、2013年11月

「プルトクラート」(plutocrat)は、ギリシア語で富を意味する「プルトス」(ploutos)と強さや力を意味する「クラトス」(kratos)を結びつけた造語で、現在、世界で急速に影響力を強めつつある超富裕層を指す。本書は、超富裕層の現実を丹念に取材し、彼/彼女らの内在的論理を紹介している。

<アメリカが「大圧縮時代」から「上位一パーセント時代」に移行したのはごく最近の出来事なので、資本主義の作用について抱くわれわれの直観的なイメージは、いまだ現実に追いついていない。じつは、所得格差の拡大はわれわれの予想を上回るほど急速に進んでいるが、大半の人びとはそれに気づいていない。

そのことを明らかにしたのは、デューク大学の行動経済学者のダン・アリエリーである。二〇一一年。ハーヴァード・ビジネススクールのマイケル・ノートンと共同で行った実験によって発見したのだ。この実験では、所得上位二〇パーセントの人びとが得る富の割合は、アメリカでは全体の八四パーセント、スウェーデンでは三六パーセントであることが実験の協力者に伝えられた。すると、彼らの九二パーセントは、富の分配の面ではアメリカよりもスウェーデンのほうがいいと回答した。アリエリーはその後、アメリカにおいて理想的な富の分配の割合について質問した。すると、上位二〇パーセントの人びとが手にする割合として適切なのは全体の三二パーセントであるという結果になり、スウェーデンの数値よりも公平に近いものになった。どうやらアメリカ人は、富の不平等という点からいえば、生活するにはアメリカよりもスウェーデンのほうが好ましい、あるいは、今日のアメリカよりも一九五〇年代のアメリカのほうがいいと思うようである。そして、彼らの理想にもっともよく合致するのは、イスラエルの農業共同体、キブツ式の平等主義であると思われる。

しかし、実際のデータとわれわれの抱くイメージが異なるからといって、実際に起きていることを無視していいわけではない。アメリカ式資本主義――さらには、世界各国の資本主義――が変わりつつあることを理解するためには、最上層で何が起きているかを知っておかなければならない。階級闘争ではなく、数字に目を向けるのである。・・・・・・

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・河上肇『貧乏物語』岩波文庫、1965年
・堤未果『(株)貧困大国アメリカ』岩波新書、2013年
・ジョセフ・E・スティグリッツ(楡井浩一/峯村利哉訳) 『世界の99%を貧困にする経済』徳間書店、2012年

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