官々愕々 みんなと維新の「裏切り」

特定秘密保護法案が今国会で成立しそうだ。この法案は、10月5日号の本コラムで指摘したとおり、問題だらけなのだが、ほとんど意味のない「修正」をしただけで、それが成立してしまう。

衆参のねじれが解消し、数の上で圧倒的優位に立つ自民党の法案だから通るのは当たり前だし、そんな政権を選んだ責任は国民にあると言われればそれまでだ。しかし、国民、マスコミが大きな疑問を持つ法案がこんなに短期間で成立していいのかと、あらためて日本の民主主義の行く末に危機感を抱く人も多いだろう。

今回驚いたのは、国民の多くが期待したみんなの党と日本維新の会が、ほとんど意味のない修正だけであっさりと賛成に回ったことである。民主党も両党に遅れまいと修正協議をしている(11月20日段階)。ただ、民主党に期待する声は元々なかったため、街頭では維新とみんなに騙されたという声が多かった。

では、有権者は本当に騙されたのだろうか。おそらく両党の支持層のうち、裏切られたと感じているのは維新で半分以下、みんなでは半分強というところではないか。

維新は元自民党が多く、タカ派色が強かったところに、新人議員の中には石原慎太郎議員に憧れて政治家になった人もいて、全体としては右翼的な傾向が強くなってしまった。支持層にも結構右寄りの人がいる。ただし、元祖大阪維新の会の支持層、特に大阪のおばちゃん層などでは、心情的にリベラルという支持者も多い。

みんなの党は、維新ほどではないが、渡辺喜美代表は元々自民党で安倍氏とも近く、最近ではタカ派的な言動も目立つ。同党には、江田憲司前幹事長をはじめ、リベラル色が強い議員も多いのだが、江田幹事長解任後は渡辺代表の影響力が強まり、リベラル派は封じ込められているのが現状だ。みんなの党の支持層は、維新の会とダブるところが多いが、維新の右寄りのイメージを嫌ってみんなを支持しているという層も多いので、維新よりはリベラル層が厚い。

つまり、どちらの政党も、タカ派とハト派両方の勢力がいるが、いずれの政党でも現在は、タカ派が優勢という状況だ。一方、維新もみんなも支持層が「改革」を求めている点ははっきりしている。民主党に改革の期待をかけたのに完全に裏切られて、自民に戻るわけにもいかず、両党に最後の期待をかけている。

そこで思い出して欲しいのが、本コラム9月7日号で書いた「第四象限の党」構想だ。

有権者を左右に分けて、右半分を既得権と闘う改革を求めてバラマキに反対する人々、左半分をそうでない人々に分けると、維新とみんなの支持層は右半分に入る。

次に、上半分を安倍政権が推し進める集団的自衛権行使、国防軍規定を含む憲法改正などの好戦的な政策を支持するタカ派、逆に下半分をこれに反対するハト派とすると、共産党や社民党の支持層が下半分に入る。

上下左右で4つのブロックに分かれるが、既得権と闘いバラマキに反対(右半分)で、好戦的・タカ派的な政策に反対するハト派(下半分)に入る層、すなわち、右下のブロック、数学的に言えば、第四象限に入る層が、国民の中にかなり多数存在する。しかし、現実には、彼らが安心して投票できる政党がまったくない。維新とみんなが唱えた「脱原発」という言葉にリベラルの香りを感じて両党に投票した人にとっては、今回の結果は、「裏切り」と映ったことだろう。

第四象限の党が生まれて選択肢が揃わない限り、迷える有権者の苦悩は続くのである。

『週刊現代』2013年12月7日号より

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