[自転車競技]
白戸太朗「三陸を走る! ~ツールド東北の意味~」

朝焼けを浴びながら、スタートの号砲を待つ

 走りながら、こみ上げてくるものを抑えられなかった。胸が熱くなり、涙が出てくる。サングラスをしていなかったらカッコ悪い面をさらけ出すところだった。青い空と、蒼く静かな海。優しい笑顔の応援者たち。11月3日、「ツールド東北」を走りながら、そんな感情に襲われた参加者は僕だけではなかったはずだ。

「東北で自転車イベントやります」。そんな話をYahoo! JAPAN から聞いたのは春のこと。「Yahoo?」「東北?」「自転車イベント?」と、最初は頭の中でこれらのワードが全くつながらない状態。しかし、何度かの打合せをしているうちに、彼らの本気度が伝わってきた。IT企業である彼らはもちろんイベントのプロではない。通常このような場合は、イベント運営会社にお金を支払ってイベント業者に業務委託する。ところが彼らは主催者として、お金を出すだけではなく、様々な手配、運営関係まで自分たちの手でやろうとしていたのだ。

 イベント業務というのは人手がかかり、地味で面倒な仕事が多い。ましてや、その業務をやったことがない人が行うとなると、その手間は計り知れない。Yahooの社員だって、通常の業務もあるわけで、このイベントに掛かりっきりではいられない。その中で黙々と、いやバタバタとこなしているスタッフを見ていると、「お手伝いしないといけない」という気になっていった。

大会ではこんなシーンが沢山見られた

 被災地でのイベントに関しては、当初迷いもあった。物見遊山で行くようで引け目もあったし、被災者はどんな気持ちで、都会から来る人を見るのだろうかという不安もあった。しかし、以前、気仙沼大島でランニングイベントを主催した時に、かけられた言葉が忘れなれない。「来てくれてありがとう!」。僕らはただ、そこで走っていただけなのに、そんな声をかけてくれた人たちの顔を忘れられない。だから今回も、難しいことを考える前に僕たちは行くべきだと思っていた。そして、走ると決めたその日から、石巻を以前より意識して生活するようになったのだ。