読書人の雑誌『本』より
2013年12月14日(土)

『データを紡いで社会につなぐ―デジタルアーカイブのつくり方』著:渡邉英徳
デジタル人間が紙の本を書いた話

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僕は大学教員として、学生たちに情報デザインを教えています。そしてここ数年は、「人々の記憶を伝える」ための「デジタルアーカイブ」づくりに、非営利で携わってきました。このデジタルアーカイブという用語はさまざまな意味で使われていますが、僕は「資料をデジタル化してウェブ上に保存し、一括で見られるようにしたもの」というほどの意味で使っています。

このたび、このデジタルアーカイブ制作のことを中心に、『データを紡いで社会につなぐ―デジタルアーカイブのつくり方』(講談社現代新書)という本を書きました。いささか中身を想像しづらいタイトルかもしれませんが、「データと社会のかかわりについて知るための入門書」をしたためるつもりで取り組みました。これまで論文などに書いてきた技術話はなるべく控えめにして、これまでに考えてきたこと、そして出会った人々とのつながりに焦点を当てて書きました。

僕がこれまで手がけてきたデジタルアーカイブは、海面上昇の危機に瀕しているといわれる南太平洋の島国ツバル、第二次世界大戦において広島と長崎に投下された原子爆弾、沖縄戦、そして東日本大震災についてのものです。

これらのデジタルアーカイブでは、グーグル社のデジタル地球儀「グーグルアース」にそれぞれのデータを重ねあわせて、さまざまな情報を一望できるようにしています。たとえるならば、無数の情報がデジタルの地球儀に重なり合い、ネット上の仮想空間に浮かんでいるというイメージです。

こうしたデータはひとつひとつアイコンで示されており、クリックするとフキダシが開き、より詳細な資料や写真が表示されるようになっています。

アーカイブはウェブで公開されていますから、いつでもどこからでも、自由に見ることができます。内容を更新したり、あらたなデータを追加していくこともできます。時の経過につれて、あたかも生き物のように成長していくのです。

震災直後には、デジタルアーカイブづくりで培った技術を応用し、さまざまなデータを集約し、人々にわかりやすく提供する試みも行ないました。これらは、時には面識のない人々とツイッター等で連絡を取り合いながら、共同で取り組んだものです。その時つくったものには、「前日に車が走った道路」のデータ(通行実績情報)と、避難所の位置を重ねたマップなどがあります。

震災発生から一年半後に開催された「東日本大震災ビッグデータワークショップ」では、放射性物質の飛散状況や、テレビ報道の空白域を突きとめようとするプロジェクトにも参加しました。これらの成果物は、いまでもウェブで見ることができます。

『データを紡いで社会につなぐ―デジタルアーカイブのつくり方』
著者:渡邉英徳
講談社 / 定価840円(税込)
 
◆内容紹介
広島と長崎の原爆。東日本大震災。歴史や大災害の記憶のデータを、時代や国境を超えて伝える“新しいデジタルアーカイブ”とは。注目の“情報アーキテクト”が、現代におけるデータと社会の関わりを考える。

著者・渡邉英徳氏は、「ナガサキ・アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」「沖縄平和学習アーカイブ」「東日本大震災アーカイブ」等、グーグルアースに証言や写真、動画等を載せたデジタルアーカイブを地元の人々との協働により制作、注目されています。肩書は情報アーキテクト。データを見やすくデザイン、貴重な記録を時空を超えて伝え「記憶のコミュニティ」をつくる―そんな仕事を通して現代におけるデータのあり方を語ります。
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