内田洋子 第3回 「ボールペンで字を書いているうちはまだまだ子供。万年筆で字を書いてはじめて大人になる」

撮影:立木義浩

第2回はこちらをご覧ください。

シマジ 10月に出た新刊『カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想』も発売されてすぐに買って読みました。20編の作品はどれも捨てがたい味わいがありましたが、やっぱりタイトルにもなっている「カテリーナの旅支度」が最高でしたね。

内田 有り難うございます。読む本がたくさんあるのに内田の本をさっそく読んでいただき感謝感激です。

シマジ すべての作品に通じることですが、内田さんの物語には水先案内人のごとくいつも「私」が登場しますね。しかも「私」は物語に登場はするが、冷静沈着な語り部に徹している。そこが魅力ですね。

内田 そこまで深く読み込まれていて嬉しいです。

シマジ 高校時代に全集を読破したサマセット・モームの『月と六ペンス』の「私」を彷彿とさせます。物語に協力すれど介入はしないあの冷静な態度と似ています。だから内田さんはモームのような優れたストーリーテラーなんですね。

すべて「私」が語り出し、物語が動き出すという巧みな構成がじつに効果的だからエッセイ賞を受賞したのでしょうが、わたしはむしろ直木賞ものだと思いましたね。

内田 こんなに褒められるとサルデーニャのカラスミをまたお届けしなければいけませんわね。

立木 内田さん、おれの存在も忘れないでね。

内田 立木先生にお写真を撮っていただくだけで光栄です。もちろん立木先生の分もご用意させていただきますわ。

立木 写真は何枚かおれが選んで紙焼きしたものをミラノに送るよう、セオに伝えておきましょう。