『図解・首都高速の科学』
建設技術から渋滞判定のしくみまで
川辺謙一=著

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日本の道路技術のショーウィンドウ

1962年、東京オリンピックに先立って開通した首都高速道路。
制約の多い都市部に建設するため、
首都高速には常に最先端の道路技術が導入されてきた。
そこから日本や世界に広まった技術も少なくない。
2020年に再び開かれるオリンピックに向けて、
新たな段階に立った首都高速の
建設・運営・保守の舞台裏を余すところなく解説する。


はじめに

 首都高速は、走る展望台だ。車中から見上げれば、東京タワーや東京スカイツリー、銀座のピル群、六本木ヒルズ、羽田空港旅客ターミナルビル、横浜ランドマークタワーなどが見え、目を横に向ければ、日本橋、池袋、新宿、渋谷、六本木、上野、お台場などの街並みが間近にとらえられる。地平からは見えない東京の景色が首都高速では見えるのだ。

 東京という街の全体像を知りたければ、地下鉄を乗り継いで各地を巡るよりも、首都高速を走る乗用車やパスに乗って景色を眺めるほうが早い。たとえば、首都高速都心環状線は、JR山手線の半分以下の距離でありながら、沿線には東京の風景が凝縮されている。1周すれば、渋滞がないときならわずか20分で、東京がおおよそどんな街かがわかる。

 首都高速は、首都圏に欠かせない交通の動脈であるが、首都圏に住んでおられない方も、見えないところでその恩恵を受けている。たとえば、今手にされている本書は、首都高速を通じて東京から全国各地に配本されたものである。郵便や宅配便をはじめとした物流ネットワークは、首都高速を利用するように構築されており、さまざまなものが首都高速を通じて東京から出て、東京に集まってくる。旅客輸送する高速パスのネットワークも同じだ。つまり、首都高速は、たんなる首都圏の地方道路ではなく、日本全国の道路ネットワークの中心的存在なのである。

 首都高速は、都市高速道路である。欧米の主要都市の中心地、たとえばロンドンのピカデリーサーカスや、ニューヨークのタイムズスクエアには高速道路は通っていないが、東京では日本橋や六本木交差点、渋谷駅前など、人が集まる場所の真上に高速道路の高架橋がある。都市部を通る都市高速道路は欧米にも存在するが、それらを参考にして改良し、中心地にも入り込んだのが、首都高速なのである。そのため、首都高速は、のちに世界各地に建設された都市高速道路のモデルとなった。大阪や名古屋、北京、ソウル、バンコクなどの都市高速道路は、首都高速に構造がよく似ている。

 首都高速は日本の道路技術の粋が集められたネットワークでもある。制約が多い都市部に高規格道路を張り巡らせるために、さまざまな技術が首都高速で開発され、日本や世界の道路に広まっていった。その意味で、首都高速は道路技術のショーウインドウともいえる。首都高速の技術を知ることは、日本の道路技術全体を知ることにつながる。

 そんな首都高速は、2012年12月に開通50周年を迎えた。1964年の東京オリンピックのために建設されたとよく誤解されるが、首都高速の一部は、その開催が決まる直前に着工していた。2020年にはふたたび東京オリンピックを支える交通インフラとなるが、施設の老朽化(高齢化)ばかりが報じられており、首都高速がなぜ必要だったかは案外知られていない。だからこそ、首都高速を建設した目的や現状を整理して、将来像を考える必要がある。とくに技術的な話は、ロジカルな考察と試行錯誤の繰り返しを把握することが必要なので、見た目のイメージで判断しではならない。しかし、こうした視点で一般向けにまとめた書籍はほとんどないので、首都高速道路株式会社の協力を得て本書を記した。

 首都高速を知るには、実際に走るのが早道なので、紙上でドライブを擬似体験していただきたい。第1章では都心環状線、第3章では東京・横浜間を結ぶ新旧のルート、第5章と第6章では世界最大級のトンネルや橋梁がある中央環状線を走る。この順に読めば、最古から最新の路線を通ったことになり、首都高速の歴史や技術の概要がおわかりいただけるだろう。また、その他の章では、概要や維持、管理、将来像などを掘り下げて説明した。

 首都高速ドライブのスタート地点は、東京駅。ここは日本の鉄道ネットワークの中心であり、高速パスも多数発着する、東京でいちばんアクセスしやすい場所だ。八重洲口前でレンタカーを借りれば、首都圏以外にお住まいの方でも、首都高速ドライブが楽しめる。では、いざ出発!
 

著者  川辺謙一(かわべ・けんいち) 
一九七〇年、三重県生まれ。交通技術ライター。東北大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。化学メーカーに入社、半導体材料などの開発に従事。二〇〇四年に独立し、雑誌・書籍に数多く寄稿。高度化した技術を一般向けに翻訳・紹介している。著書に『図解・新世代鉄道の技術』『図解・地下鉄の科学』『図解・新幹線運行のメカニズム』(いずれもブルーバックス)、『鉄道をつくる人たち』(交通新聞社)、『鉄道を科学する』(サイエンス・アイ)など多数。本書では、図版、ページデザインも担当
『図解・首都高速の科学』
建設技術から渋滞判定のしくみまで

著者:川辺謙一

発行年月日:2013/11/20
ページ数:256
シリーズ通巻番号:B1840

定価:本体 900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)