国家戦略特区法案のスキームや良し しかしそれを台無しにしかねない気がかりな条項が潜んでいる

 国会の目玉法案の一つに、国家戦略特区法案がある。
 野党の一部から、国会審議で「今回の国家戦略特区法案の規制改革項目は小粒すぎて法案にあたいしない」という批判があるが、一体どうなのだろうか。

 10月21日付けの本コラム「ねじれ解消後の今国会は与党内の「産業政策」派vs.「規制緩和」派を反映する産業競争力強化法案と国家戦略特区法案の行方に注目せよ」でも触れたが、これは、産業競争力強化法案よりまともだろう。

 また、10月28日付けの特会法や公務員改革法11月4日付けのタクシー減車法案11月11日付けの会社改正案よりも、はるかにまともだろう。

 国家戦略特区法案では、外国医師による診療、病床規制、医学部新設、雇用ルールの明確化、公設民営学校、容積率規制の転換、農業委員会、農業信用保証などいわゆる「岩盤規制」で穴があいた。これまで全く前進できなかった分野であるから、一定の成果である。

 こうした成果に対して、抜けている例を探すことは簡単だ。
 ただ、一回の国会会期で、すべての岩盤規制を解決しきることはできるわけがなく、残された課題は、当然数多いだろう。

 そうした観点から、筆者としては、穴の開いた分野や穴が開いていない分野に着目するよりも、国家戦略特区法案で書かれている規制緩和の「スキーム」を精査したい。
 そのスキームやその運用次第で、今後の規制緩和のさらなる拡大などが決まってくるからだ。

 よくいわれるが、規制緩和は、法律の取り組みで2年間、その成果が出るのに3年間の合計5年くらいかかることが多い。
 つまり、規制緩和は懐妊期間がながく、必ずしも成果がすぐでないものばかりなので、永続的に取り組まないといけないが、今回の国家戦略特区法案では、一定分野について少なくとも最初の2年間はスキップできる。

特区実現ための3つの仕組み「担当大臣」「特区会議」「特区諮問会議」

 今回の法律では、特区実現のためのスキームとしては、「特区担当大臣」「特別区域会議」「特区諮問会議」という3つの仕組みがある。

 第一の特区担当大臣では、大臣のリーダーシップが期待されている。

 かつて、構造改革特区は、初期には、例えば農業へのリース方式での企業参入など、大変大きな成果があった。その時期には、特区担当ほぼ専任の大臣が置かれており、その成果が如実に表れたのだろう。
 ところが、その後、専任大臣ではなくなり、構造改革特区の成果が鈍ってきたように思われる。このため、特区担当大臣を専任にすべく、創設した。

 第二に特区会議だ。
 これは特区ごとに国・地方・民間の三者が一体となった"統合推進本部"を設けることで、それを特区内における、いわば"ミニ独立政府"にする効果がある。

 従来の規制改革や特区の運用では、現場レベルの規制改革ニーズが、抑え込まれてしまって、なかなか表に浮かび上がってこない、ということもあった。これを防ぐため、特区担当大臣、首長、民間代表で構成する統合本部を設け、これまでの弊害を防いでいる。

 第三に、特区諮問会議。
 過去の歴史を振り返れば、やはり、規制改革における最大の難関は、規制を所管する省庁の壁をどう突破するかだ。
特区諮問会議は、そのため、特区担当大臣と規制担当大臣で、民間有識者も交えて議論し、そのうえで、最後は総理が決定する、という、経済財政諮問会議スタイルを可能にしている。

 以上のスキームはいい。

 しかし、法案の細部には、このスキームを台無しにしかねない気がかりな条項も含まれている。

 法案第8条第6項。特区会議において、特区担当大臣、関係地方自治体の長など構成員の全員の合意とされているが、関係地方自治体とはどこまで含むのか、あまり関係のない人まで構成員となると、迅速な意思決定ができなくなる恐れがある。

 また、法案第8条第9項も気になる。特区諮問会議での審議を経て、総理が意思決定を行う際、関係大臣の同意を得なければならないとされている。

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