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「食材偽装」緊急役員会議 三越伊勢丹そごう・西武髙島屋阪急阪神 近鉄帝国ホテルほか一流企業の迷走と困惑
阪急阪神ホテルズ、髙島屋、近鉄旅館システムズと有名企業ばかり〔PHOTO〕gettyimages

「発表するべきか否か」「カネは客に返すべきか」「誰が責任をとるべきか」「他社もやっているのに」「後出しのほうが得では」「何エビだっていいじゃないか」「分からない客が悪い」
侃侃諤諤の臨時役員会で何が話し合われたのかほか

過去、これだけ集中して謝罪会見が行われたことがあったろうか。日々明かされる食の嘘、頭を垂れる幹部たち。その裏側には、消費者そっちのけで、保身に走る企業トップたちの駆け引きがあった。

「議事録に載せるなよ!」

都内の高層ビルの一室に、スーツ姿の男たちが集められていた。部屋の一番奥に座った男は苦りきった表情のまま、口を開こうとしない。男の目配せを受け、立ち上がったのは、この集団の中で最も若い営業部の部長である。

「では、営業部のほうからご説明いたします。先の阪急阪神ホテルズのメニュー誤表示事件を受け、当社でもテナントや社内レストランの調査を始めました」

「ちょっと待ってよ。それは不正の根拠というか、何かウチでも誤表示があるというアテがあってやってるの?」

「阪急阪神はあれ、内部告発でもあったんですか?それともマスコミに嗅ぎつけられて?」

「会見は自主的に開かれたと聞いております」

「『フレッシュジュース』が搾りたてじゃなかったとか、『手ごねハンバーグ』は全部が全部手ごねじゃなかったとか、そんなの、どこだってやってるんだろ。客だって分かってない。分からないほうが悪い」

「調査したことでかえって、不正が見つかったらどうするの?藪ヘビでしょ」

阪急阪神ホテルズが「食材偽装」で会見(10月24日)を開き、集中砲火を浴びた2日後。日本人ならば、誰もが知っている一流企業では、本社営業部から全国の各ブロックに担当マネジャーを派遣していた。

現場を直接まわって、レストランのメニュー表示と実際に出されたものが違っていないか、表示通りの食材が弁当に入っているか、確認をさせたのだ。

特に気を使ったのは産地。「鹿児島産の黒豚」と書かれていたら、本当に鹿児島の黒豚が入っているのかどうかを、出入りの業者も含め確認した。

その結果—。

「……間違いないのか?」
「やはりエビか……」
「エビなんて何を使ったっていいじゃないか。客は気づいてないんだから。おい、君、いまの発言は議事録には載せるなよ」
「ウチはテナントのレストランに騙された被害者じゃないのか。ウチに責任がないんだから、わざわざこちらから発表して謝る必要はないだろう」
「こうして報告があがってきている以上、見て見ぬふりはできません。万一、握りつぶしたことが外に漏れでもしたら、それこそ我が社の問題になります。マスコミに『隠蔽だ』『コンプライアンスがなっていない』と袋叩きにあう。社長の進退問題に発展しますよ」
「弁護士は?何と言ってるんだ、弁護士は!?」
「景品表示法に抵触する可能性はありますね。けして楽観はできません」
「誰か消費者庁とは、話はしたのか?」
「景品表示法違反となる可能性があるとのことでした」
「発表……するしかないでしょう」
「様子を見たほうがいい。いまは国民の関心があつまっているから、ほとぼりが冷めたころに、後出しでいいんじゃないか」
「わかっている事実はすべて公表する。それが世の中の流れです。隠しごとをしたって、いまの時代、ツイッターもありますし、内部告発ですべて暴露されるリスクが高い……」

いま日本全国の食品を取り扱う企業で「食材偽装」に関する緊急役員会議が開かれている。きっかけとなったのは、阪急阪神ホテルズが明らかにした「レストランメニューの誤表示」だ。

車エビ→ブラックタイガー、レッドキャビア→トビウオの卵といった食材の偽装が行われていたことが発覚。月末には、ミシュラン掲載の旅館を含む近鉄系の9ホテルと旅館で、クズ肉を集めて結着剤で固めて一枚肉にした成型肉を、「和牛」として出していた悪質なケースも報告された。

「近鉄さんの発表を受けて、本社会議室に営業、商品統括、企画部門の各担当役員や、お客様相談室の担当者が集められた」と言うのはさる一部上場企業の役員だ。

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