ドイツ
ミュンヘンに冬季オリンピックは必要ない!? 巨大イベントの開催を拒絶するドイツ人のこだわりとは
〔PHOTO〕gettyimages

11月10日の日曜日、2022年の冬季オリンピックをミュンヘンに招致するか、しないかを決定する州民投票が行われた。バイエルン州が4つに分けられ、それぞれの地区で投票が行われたのだが、4区すべてで反対派が勝った。「オリンピックは要らない!」というのが、住民の声らしい。

実はミュンヘンは、2018年の冬季オリンピックにも立候補していた。熱心な売り込みと素晴らしいプレゼンが展開されたが、最終的には韓国に敗れた。そこで、ミュンヘン市は再挑戦を図るつもりだったが、今回の州民投票で、その夢は完全に潰えてしまったというわけだ。

東京オリンピック決定で日本中が沸いたのがつい最近のことだったので、私には、バイエルン州の人々の態度がとても異質に映った。しかし、よく見てみると、投票結果は次のようだ。

1. ミュンヘン地区:
賛成: 47.90% - 反対: 52.10%
投票率: 28.9%

2. トラウンシュタイン地区:
賛成: 40.33% - 反対: 59.67%
投票率: 39.98%

3. ベルヒテスガーデン地区:
賛成: 45.98% - 反対: 54.02%
投票率: 38.25%

4. ガルミッシュ-パーテンキルヘン地区:
賛成: 48.44% - 反対: 51.56%
投票率: 55.80%

つまり、賛成と反対はミュンヘン地区とガルミッシュ-パーテンキルヘン地区ではわりと僅差で、しかも、ミュンヘンに至っては投票率が極端に低い。投票率が28.9%で、そのうちの52%が反対ということは、反対派は全体の15%ほどでしかない。

こういう投票が行われるときは、たいてい"絶対反対"という人の方が熱心で、投票所へ行くモチベーションが高い。だから、反対派の意見はきちんと投票結果に反映されたとみて間違いない。つまり、うがった見方になるかもしれないが、ミュンヘン地区の反対派の数は、15%でほぼ全員だった可能性も高い。

では、投票に行かなかった人はどうなのか? 投票率28.9%ということは、71.1%の人が投票しなかった。この4地区の中では、ミュンヘンは圧倒的に人口が多いので、ミュンヘン地区で投票に行かなかった71.1%の人々の割合は、州全体から見るとかなり大きい。ひょっとすると、この中には、冬季オリンピックが開かれたなら、喜んだ人も結構いたかもしれない。

東京にも、オリンピックに絶対反対の人はいた。オリンピック開催が決まった時、私の目には、国民の多くはとても喜んでいたように映ったが、もし、招致するかどうかを都民投票で決めていたなら、ひょっとすると、ミュンヘンと同じ結果になっていた可能性もあっただろう。

NOの理由は環境破壊・莫大な経費・IOCへの批判

さて、ミュンヘンでオリンピックの招致に反対していた急先鋒は緑の党で、バイエルン州の州議会議員の1人が"NOlympia"というキャンペーンを繰り広げた。オリンピックにNOと言おうということだ。

NOの理由はたくさんある。一番は、オリンピック関係施設建設のための環境破壊。ドイツでは、木を切ること、森を潰すことはタブーだ。大きな木を切る場合、自分の敷地に生えているものでも許可を取らなければいけない自治体は多い。ところが、冬季オリンピックとなると、アルプスの山裾が会場になることは避けられない。

「アルプスが破壊される!」

これが自然を愛するドイツ人の心の琴線に触れた。

また、莫大な経費も疑問視された。そんなお金があれば、教育やインフラなど、市民や州民の利益につながることに使うべきであるという意見だ。ドイツの中では比較的裕福なバイエルン州といえども、お金が余っているわけではない。

「大金を投じて、一回しか使わない巨大施設を作るのは、税金の無駄遣いだ」と言われれば、「確かにその通りです」と答える以外にない。オリンピックほど大きなイベントは、そうそう開催されない。南アフリカのサッカーのワールドカップのために建てられたスタジアムなどは、今ではどれもこれも廃墟になっているという。

さらに、IOC(国際オリンピック)への批判も、招致反対の大きな原因となった。いや、ひょっとすると、これこそが、今回の反対キャンペーンに弾みがついた一番大きな理由といえるかもしれない。

IOCへの批判というのは、もちろん、スポーツ自体を拒絶するものではない。IOCの金権体質、閉鎖性、陰謀、賄賂、非民主性などがやり玉にあがっているのだ。そもそもIOCとは、中立な国際機関の一つのような顔をしているが、実際には、放送権料販売とスポンサーからの収入で、莫大なお金を動かしている「非営利団体」なのである。IOCの不正は、以前からたびたび報道されている。

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