データを社会に活かすためのヒント
『データを紡いで社会につなぐ』著者・渡邉英徳氏インタビュー

渡邉 英徳

――そんなデジタルアーカイブですが、どのようにしてつくりはじめたのですか?

渡邉 最初に制作したのが、南太平洋の島国ツバルの人々の顔写真と証言をグーグルアースに載せた「ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト」でした。これは、ツバルの支援活動をされている写真家の遠藤秀一さんと知り合いになって始まったプロジェクトです。これをつくっているうちに「この手法を使えば、いろいろな説明ができるなあ」と気づいたのです。

ツバル・ビジュアライゼーション・プロジェクト

 たまたまこのツバル・プロジェクトを見た長崎出身の若者たちから「この手法で、長崎の原子爆弾の被爆者の資料もデジタルアーカイブにしてほしい」という依頼があって、その後、「ナガサキ・アーカイブ」のプロジェクトが始まりました。このとき、被爆者の方の高齢化が進み、亡くなる方もいらっしゃる時代に、この手法を使えばできることがあると思ったのです。貴重な資料をウェブ上の1ヵ所に集めて、資料の全体像や互いの関係がひと目でわかるようにしておく意味と、僕の考えていた手法がぴったり重なる気がしました。

当事者でない人間が関わるうえで心がけたこと

――「ナガサキ・アーカイブ」、そのあとの「ヒロシマ・アーカイブ」は、原爆という非常に重い歴史上のできごとを扱っています。当事者でない県外の人間が入っていって関わるうえで、心がけてこられたことはありますか?

渡邉 はい。大きくは3つあります。

 ひとつは、「『できたもの=ゴール』のイメージをできるだけ見てもらう」ことです。

 ほとんどの方は、「資料を未来に残す」という大きな目的には共感していただけても、「デジタルアーカイブ」と言われてピンときませんよね。

 ナガサキ・アーカイブでは、最初に長崎に伺ったとき、まずこのデジタルアーカイブの「プロトタイプ」を、地元テレビ局で長年原爆の問題を追っていらっしゃるキーマンのかたに見てもらいました。そして「見た目には、デジタル地球儀にたくさん小さな顔写真が載っているだけですが、ズームできたり、顔写真をクリックするとその人の証言が読めたりできる、そして、いろいろな場所にある資料を一か所に集めることができる、それから、AさんとBさんが当時すぐ近くにいたということや、どこに人がおおぜいいたかも、ひと目でわかる」といったことを、一生懸命説明しました。