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国民的大問題 どこまで行っても先は見えない 東電社員がみんなやる気をなくしたら フクイチから誰もいなくなる日
瀬直己社長ら経営陣が熱心なのは柏崎刈羽の再稼働ばかり〔PHOTO〕gettyimages

汚染水ばかりが注目されている福島第一原発で、新たな〝恐怖の作業〟が始まろうとしている。だが政治家も経営陣もその危険性への言及を避ける。将来を悲観した東電社員は次々と会社を去っている。

こんな会社、辞めてやる

「このまま行ったら、フクイチからは誰もいなくなるだろうね」

フクイチ、つまり東京電力福島第一原発で働く作業員は、こう語る。

「もう現場には、ベテランと呼べる人はほとんどいない。全面マスクで必死に仕事をしても、日当はよくて1万5000円。ひどい下請けだと1万円を切る。民主党政権時代に野田(佳彦)総理が、耳を疑うような収束宣言をしたもんだから、それ以来、危険手当も出なくなった。ただでさえ線量が(年間の被曝限度を)オーバーして原発に慣れた作業員はどんどんいなくなっているのにね」

これまでもお伝えしてきた悲惨な作業員の現状。だがいま彼らは、東電本体の社員にもかつてない変化が起こっていると口々に指摘するのだ。

「東電の社員のなかには、11月を前にして完全にやる気を失っている人も多いんですよ。クレーン作業が始まったら、現場の危険度がグッと増すのがわかっているけれど、会社も政府もたいしたことないような顔をして、手当も出ない。そりゃ、やりきれないでしょう」「KK(柏崎刈羽原発)から来た応援要員の社員が、早く戻らせてくれと訴えている。周囲には『戻れないならオレも会社を辞めてやる』なんて漏らしている」—。

東電社員に会社を辞めると発言させた「11月のクレーン作業」。それは、4号機の使用済み燃料プールに保管されている、燃料棒の取り出し作業のことだ。

3・11の地震発生4日後、3月15日に水素爆発を起こした4号機。使用済み燃料プールのある5階から上は建屋が大きく破損し、プール内にもガレキが落下。

金属製の階段や足場、コンクリート片などが本来はミリ単位の傷も許されない燃料棒の上に降り注いだ。

元米国エネルギー省長官上級政策アドバイザーで同国の使用済み燃料に関する第一人者であるロバート・アルバレス氏はこう語る。

「福島第一の4号機の使用済み燃料集合体の数は1331本。これらは水のなかにあるため放射線が大幅に遮蔽されていますが万が一、水から出してしまったら近寄った人間はすぐに致命的な被曝をしてしまいます。燃料を取り出すには水中で燃料棒を容器に移し、水のなかに入ったままの状態で取り出す必要があるのです。また、使用済み燃料同士が近づくと、再臨界が起きる可能性も高まります」

汚染水も十分すぎるほど深刻な影響をもたらしているが、燃料棒の取り出しはこれまでとは次元の違う危険性をはらむ作業だ。

東電はこれまでに、爆発によって激しく損壊した4号機の5階床から上の構造物を撤去。そのうえで4号機建屋のすぐ横から、アルファベットのLの字が上下逆さになったようなかぎ型の建物を建設し、燃料棒を取り出すための巨大な天井クレーンを設置した。

このクレーン施設には今年8月、茂木敏充経産大臣も訪れ、作業が順調に進んでいるとアピールしようとした。だが、実際に燃料棒の取り出し作業にかかわる協力企業の社員はこう話す。

「作業を11月に始めるというのは、事態が進展していると見せたい政治家と本店の都合で決められたようなものですが、あわてて始めたってこの作業には10年以上かかる。その間、絶対にアクシデントがないとは誰にも言い切れない。もう神頼みですよ。

先日も作業にかかわる別の会社の社長が、神社でお祓いを受けて、お札をもらったと話していました。何しろ、9月には実際に、3号機で使っていたクレーンのアームが折れてしまった事故もありましたからね」

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