内田洋子 第2回 「卒論に北斎を選んだ女子大生の助っ人役を引き受けて出会った、鉄道員オズワルドの物語」

撮影:立木義浩

第1回はこちらをご覧ください。

シマジ 内田さんの作品は全部読んでいますが、最高傑作をひとつあげろといわれたら、わたしのイチオシは『ミラノの太陽、シチリアの月』(2012年、小学館)に納められた「鉄道員オズワルド」ですかね。

内田 有り難うございます。

シマジ 本当によく書けていて、まるで短編小説みたいですね。もはやエッセイの域を突き抜けてるんじゃないかな。

内田 作り込んでいるんだろうと編集のみなさまによくいわれますが、あれは全部本当の話なんです。

鉄道員オズワルドの物語

シマジ それでは是非教えてください。その後の鉄道員オズワルド一家はどうなったんですか? オズワルド夫婦が身分の差を気にしていた、一人娘エリーザと医学生パオロの恋の行方はどう発展したんでしょうか。

内田 あの二人は目出度く結婚して子供を二人もうけて、幸せな家庭を築いています。そしてドクター・パオロはいまでは評判のいい一流の麻酔科医になっています。オズワルド夫婦はいまや二人の孫のために生きているみたいなものです。

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シマジ 「鉄道員オズワルド」の物語は、内田さんのいつもながらの達意な文章で淡々とこうはじまります。

〈 地方に住む友人リグストロからある相談を受けて、早速、会って詳しく聞くことにした。
 今朝はミラノからの道中に深い霧がかかる、と天気予報にあった。車をやめて、電車で行くことにする。
 行き先は、北イタリアのリグリア州にある海辺の町である。ミラノの人たちが週末や夏のバカンスに好んで行く東リグリアとは、ジェノヴァを挟んで反対側に位置する地味な町である。 〉

立木 セオはまだか。シマジがへたな朗読をはじめたぞ。これでは折角の内田さんの名文も台無しだ。

ヤマグチ ぼくが代わりに朗読しましょうか。

シマジ ヤマグチ、お前は師匠に似ずやさしい男だね。大丈夫、朗読はここまでであとは作品論に入るから安心しろ。