今井すみこ × 北白川道久【前編】
「伊勢神宮には、日本人が環境を大切にするという考え方のDNAがあると感じました」

[左]今井すみこさん(環境デザイナー)、[右]北白川道久さん(前・伊勢神宮大宮司)
※この原稿はON THE WAY ジャーナル TUESDAY 今井すみ子のグローバル・アイ2012年01月25日放送分を書き起こしたものです。書き起こしにあたっては、読みやすくするために必要最低限の編集を行っています。

今井: 伊勢神宮の前大宮司北白川道久様をゲストにお迎えして、いろいろなお話を伺って参りたいと思っております。よろしくお願いいたします。

北白川: よろしくお願いいたします。

今井: では、伊勢神宮のいろいろなお話を拝聴する前に、「神宮」のことを皆様が「伊勢神宮」と、お呼びしていらっしゃいますが、それでよろしいですか?

北白川: はい。一般的には「伊勢神宮」と言っておられます。また、日本書紀には、「伊勢の神(かみ)宮(みや)」という表現で記載してあります。しかし、正式には「神宮」と言います。

そして、参拝される、あるいは参拝された多くの方々は、親しみを込めて「お伊勢さん」とも言っておられます。つまり、皆様の親しみの度合いで名称は、「神宮」でも、「伊勢神宮」でも、「お伊勢さん」でも良いのではないかと存じます。

ON THE WAY ジャーナル TUESDAY
今井すみこのグローバル・アイ

パーソナリティ:今井すみこ

環境デザイナー・今井すみこが、各界のゲストを迎え、日本と世界の未来への構想を提案するプログラム。虫の目で細部を捉え、鳥の目で俯瞰する。そして心の目で、過去と現在、繋がる未来を考えるという環境デザイン。人生と、日本と世界の未来を、これからの社会を担う世代に向けてデザインしていく。

神宮では大変さを予定してお祀りに備えます

今井: そうですよね。また、日本には、他にも名古屋の熱田神宮や東京の明治神宮などをはじめとして、いろいろな名称の神宮がございます。これらの神宮と、明確に差別化した伊勢神宮ならではのお祀りの仕方や、特徴のある物事を、お話をしていただけませんでしょうか?

北白川: では、「神宮」の特徴を、まずご紹介させていただきます。

伊勢神宮には二つの正宮がございまして、その一つが皇大神宮でございます。この神宮は、「内宮」と言われておりまして、皇室の御祖先の神様である「天照大神」をお祀りしています。

つぎに、豊受大神宮がございます。この神宮は、「外宮」と言われておりまして、天照大神に、毎日毎晩お食事を差し上げる役をお務めになる豊受大神をお祀りしています。その豊受大神宮では、毎日朝晩お食事を神様に差し上げるお祀りがあります。そのお祀りを含め、伊勢神宮では年間に1700回ほどのお祀りがあります。

今井: 1700回もですか?

北白川: この数字には、伊勢神宮内にある小さなお宮のお祀りの回数も含められています。

今井: その小さなお宮の数は、いくつぐらいございますの?

北白川: 別宮14社、摂社43社、末社24社、所管社42社で、合わせて125社くらいございます。

今井: そんなにございますの。やはり、歴史的に神道の頂点に位置する神社ですね。では、次の特徴を何かご紹介いただけますか?

北白川: 神宮でお供えをするためのお米、お塩、お酒、野菜、果物、それからアワビなども、すべて自給自足で対応しています。したがいまして、神宮は、神田(しんでん)を持っています。また、野菜や果物を作る畑も持っています。魚については奉納されます。

今井: 伊勢の天の利、地の利を考えますと、神宮は、自給自足に向いたよろしい立地にございますね。間近には、川があり、海があり、山もありで・・・。

北白川: 確かにそうですね。しかし、神宮のお祀りでは約束事があり、こういう野菜や果物、そして置物などは、これくらいの大きさで作りなさいと、決められているのです。

お米に関しては、何種類も作り置きをしてあります。なぜなら、日照りでお米が充分に採れないとか、台風の影響で不作だとか、いろいろな影響を受けるからです。また、早く収穫できるお米もありますし、収穫が遅れるお米もあるからです。

今井: この話を伺うと、神宮で行われているお祀りは、大変なお仕事になるのですね。

北白川: その大変さを予定し、神宮ではお祀りに備えます。このお祀りに用いられる野菜や果物や置物などの大きさが決められている理由は、お供えするお皿などが決められているため、その器にマッチした大きさの野菜や果物などを必要とするからです。つまり、それらの器に載るようなサイズの野菜を上手に作るようにします。

今井: なるほど、そういうマニュアル・・・、マニュアルっていう言い方もおかしいのですが、そのようなものがお有りになるのですか?

北白川: それは、代々そこで作ってくださる人たちが、伝承として、慣習として今日まで、引き継いでおられるのだと思います。それらの野菜や果物、そして魚などをお祀りの際に備えさせていただいています。

今井: つまり、神宮で行われるお祀りなどに関する多くのお仕事は、今日的な言葉で言えば、システム化されているということなのですね。

もちろん、その他のお仕事も同様に、システム化されていることと存じます。これは、すばらしいことですね。まさに、環境デザインそのものです。

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