未公開株詐欺の舞台となったイーバンク銀行株と大塚HD株の行方
犯罪者集団の懲りない手口

 楽天は、3月18日、インターネット専業銀行のイーバンク銀行にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。現在の67.22%から引き上げて完全子会社化、上限や下限は設定していないものの、全株式を取得した場合、買い付け価格が1株3万3000円なので約228億円となる。

 一方、大塚製薬、大鵬薬品工業、大塚化学ホールディングスなどを傘下に持つ大塚ホールディングス(大塚HD)は、年内の株式上場を決めた。

 まだ、会社側の発表はないが、証券界は売上高約1兆円の企業グループだけに、「時価総額1兆円は確実」と、大きな期待を寄せている。

 イーバンク銀行と大塚HD――社歴も業態も違う両社に共通項がひとつだけある。未公開株詐欺に利用され、両社の株を扱ったブローカーらが逮捕されていることだ。

 両社の未公開株が出回ったのには理由がある。イーバンク銀行は、上場準備のために一時的に譲渡制限を外し、初期の株主の株が流通した。

 また大塚HDの場合、持ち株会社化する前の大塚製薬の株券が流通していた。昭和40年代、大塚グループがいまのような巨大企業ではなかった頃、業績不振でボーナスが払えなくなった時などに、創業オーナーの大塚家が、社員に額面で株券を「現物支給」していたからだ。

 不幸なのは、イーバンク銀行に銀行という信頼性があり、大塚製薬にオロナミンC、ポカリスエットといった誰もが知っている商品群を持つ知名度があったことだ。それが、未公開株詐欺グループに狙われた。

未公開会社の株券を3重売買

「将来、必ず、値上がりしますよ」

 こんな甘い勧誘を続ける未公開株詐欺グループが、全国に何十、何百とあって、高齢者を中心に騙し続けている。暴力団周辺者やマルチ商法の経験者、金融界から放逐された金融ブローカーや根っからの詐欺師などで構成された未公開株詐欺グループは、必ずしも「未公開株」だけを"商材"としているわけではない。

 マルチ商法では鍋、釜、布団に純金、と道具はさまざまだが、無限連鎖で儲けるという手口はつねに一緒だ。未公開株詐欺グループも、ある時は商品先物、ある時は海外資源、ある時はFX(外国為替証拠金取引)などと売り物はざまざまだが、電話で勧誘、乗ってきた素人投資家を騙し、資産を吸い上げる手口は同じである。

 もちろん商材にも流行はある。2000年前後、東証マザーズ、大証ナスダック・ジャパンといった新興市場が創設され、折からのITブーム、ベンチャーブームもあって、新規公開株が確実に公開価格を上回り、儲かる時代があった。

 やがてメッキは剥げるのだが、一時、「新規公開株=値上がり確実なプラチナ株」と、一般投資家の頭に刷り込まれた。そうしたタイミングを見計らって、03年頃から未公開株ブローカーが暗躍するようになった。

 そのなかには、後に刑事事件化するネットプロバイダー業者MTCIのように、自社株に価格をつけ、譲渡制限を外して流通させるなど、存在自体が詐欺のような未公開株が少なくなかった。

 それだけに、イーバンク銀行株と大塚製薬株の"本物"が流通しているのは、未公開株を扱うブローカーにとっては好都合だった。すべてが詐欺ではなく、本物もあることを世間一般に認識させられるからだ。

 もちろんトラブルは少なくない。イーバンク銀行の場合、預かり書で株券の売買がなされ、創設期の株主のなかには、約1000株を三重売買したとして、民事刑事で訴えられている人がいる。最高値50万円で流通したこともあるだけに、それだけで15億円の被害だ。表面化していないものも含めると、被害金額は100億円近いと言われている。

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