海外就職研究家/森山たつをさん【第4回】
「日本のレールから落ちても生きていけるんです」

[左]米田智彦さん(フリーエディター)、[右]森山たつをさん(海外就職研究家)

【第3回】はこちらをご覧ください。

「ゼロか100か」じゃなくて「グラデーション」でいい

米田: 日本人ってこれからも徐々に英語を話せる人が増えていくでしょうけど、『セカ就!』を読んで思うのは、職種とか環境によって、語学もグラデーションがあるんだろうなってことなんです。アメリカへ移民した人が全員流暢な英語が話せるわけではないように。

森山: そう!まさにグラデーションなんです。日本って、すぐゼロか100かってなるでしょ。英語もできないかできるかの、ゼロか100じゃないんですよ。仕事でもプライベートでも色んなレベルがあって、たとえば、アップルでマネージャーをやるんだったら、相手から尊敬されるくらいのスキルを求められるし、でも、現地採用だったら言ってることの意味が伝わればいい。東南アジアだと下手にネイティブ発音早口で話すと逆に伝わらない。

米田: 考えてみると日本語でもそうですよね。貸借対照表とか定款とか学術論文とか普通の人はなかなか読まないように。仕事じゃないなら、知らない単語がたくさん出てくるとまず読まない、読めないですから。

森山: 僕は日産にいるとき、いろんな国の人と仕事して、当時でも英語は下手でイギリス人とアメリカ人の担当は速攻外されたんです。でも、メキシコ人やタイ人といったアンネイティブな人とのやり取りを肌で感じることができたっていうのがデカかったですね。その感覚があったら海外就活できたんです。完璧な英語じゃないと働けないなんて固定観念があったら、チャレンジできなかった。でも、その感覚ってとても大事だと思っていて、海外旅行に行ってもたいした英語ができなくてもなんとかなるじゃないですか。仕事だって、その延長にあると思っているんですよ。

米田: 特に理系の人は、コミュニケーションの前に、特定分野の技術や知識があった上で仕事をしますよね。

森山: 日本人の理系業種の人でも何言ってるかわからない人多いですからね。

米田: (笑)。エンジニアとか職人としてはすごいんだけど、一般的な会話が成立しない人って時々いますよね。それで今、急に思い出したんですけど、世界一周旅行のとき、サンフランシスコのスタンフォード大学って行きました?

森山: ああ、行きましたよ。

米田: あそこって、キャンパスの右側が理工系、左側が人文系って分かれてるじゃないですか。で、右側は「Techy(テッキー)」って呼ぶんだけど、左側は何と呼ばれてるか知ってます?

森山: うーん、わからない。

米田: 「Fuzzy(ファジー)」なんですよ。なんか、日本人にとっては懐かしい響きなんですけど(笑)。それ知ったとき、自分がやっている編集とか物書きとかメディアとかの言葉を使う仕事って、まさにファジーというか、答えよりも問いを見つけるという曖昧な仕事だなって思ったんですよね。人文系って世界共通の解なんてない曖昧な世界なんだなって。ですから、僕のような、人文系のど真ん中の編集の仕事でセカ就するのって難しいのかなって、一瞬思ったことがあったんです。たとえば、縁もゆかりもないジャカルタに行って現地人相手に僕が何ができるのかなって感じたんですよ。

森山: 確かに難しいですが、現地の日本人相手の商売から入門編として始めて、これまで米田さんが積み重ねてきた日本でのカルチャーの知識とかがあるわけですから、こういうコンテンツが受けるんじゃないかと提案したり、現地人に受けそうなサブカルチャーをイベントとしてやってみたり、プロレスとか音楽とかデザインとか、ファジーでも言葉を介さずにわかるカルチャーってたくさんあるわけだから、キュレーションや発信や発掘を少しずつやっていくと面白いとは思います。

米田: あとは開き直って、現地の言葉に翻訳してもらうっていうこともありますよね。僕の『僕らの時代のライフデザイン』も今度、韓国と台湾で翻訳出版されることになったんですけど、そうなったら、もう原稿チェックとかできないから、どうなるか見守るしかないんですけどね(笑)。

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