The New York Times

貧富の格差に対処する国と対処しない国に世界は分裂しはじめた

『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より

2013年11月18日(月) ジョセフ・スティグリッツ
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〔PHOTO〕gettyimages

われわれは不公平な世界に向かっているのか?

もっとも富裕な国、とりわけアメリカの所得と富の格差はこの数十年で急拡大し、そして悲劇的なことに、この大不況以来さらに悪化したことが広く知られている。

しかしほかの国はどうだろうか。国家間の格差は、中国やインドのような新興国の経済力が、何億もの貧困者を引き上げたことで縮小しているのだろうか。貧しい国や中所得国では、格差は悪化しているのだろうか、それとも改善しているのだろうか。われわれは公平な世界へと向かっているのだろうか、それとも不公平な世界へと向かっているだろうか。

これらは入り組んだ問題だ。世界銀行のエコノミストであるブランコ・ミラノビッチらによる最近の研究はその答えをいくつか示している。

成長の陰で置き去りになった貧困者

18世紀にはじまった産業革命は、ヨーロッパと北米に巨大な富をもたらした。もちろんこれらの国での格差はすさまじいものだった。たとえば、1820年代のイギリスにおけるリバプール、マンチェスターの紡績工場や、1890年代のマンハッタンのロワー・イーストサイド、シカゴのサウスサイドの安アパート群を思い浮かべてほしい。

世界的現象としての富める者とそれ以外の間での格差は、第二次世界大戦のころからさらに広がった。今日にいたるまで、諸国間の格差は各国国内の格差よりはるかに大きい。

しかし、1980年代末期の共産主義体制崩壊のころから、経済のグローバル化が加速し、国間の格差は縮小しはじめた。1988年から2008年にかけて、「世界の市民間での地球的規模での格差が、産業革命以来はじめて縮小した」と、『持つ者と持たざる者』※1の著者で、旧ユーゴスラビア生まれのミラノビッチ氏は、昨年11月に公表された研究論文でこう指摘した。

アジアと西側先進国のように、一部の地域間の格差は際だって縮小したが、それでも巨大な格差は残されている。世界の国ごとの平均所得は、この数十年の間で、特に中国とインドの成長力に支えられて全体的に縮小した。しかしそれを個人として捉えれば、人類全体の平等は、ほんのわずかしか改善されていない。(不平等の物差しであるジニ係数は、2002年から2008年にかけて1.4ポイントしか向上していない)。

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