[サッカー]
田崎健太「里内猛が描く日本の未来図Vol.13」

国際大会ではその国のスカウティング能力が問われる

 ロンドン五輪に向けて、里内たちスタッフは合宿を行っている。コーチの武藤覚がグループリーグで対戦するスペイン、ホンジュラス、モロッコの分析ビデオを仕上げていた。合宿ではそのビデオを見ながら、基本戦術、セットプレーの対応を話し合った。

五輪で6試合を戦う

 参加者の口から何度も出たのは「6試合を戦って帰ろう」という言葉だった。
 グループリーグは3試合、決勝トーナメントで1試合勝てば準決勝に進出する。準決勝で勝てば決勝へ、負ければ3位決定戦へ。どちらの場合でも6試合戦うことになる。そして6試合を戦うというのは、4位以内に入ることでもあった。

 とはいえ、目標達成は簡単なことではない。
 年齢別を含めて日本の男子代表が国際サッカー連盟(FIFA)と国際オリンピック委員会(IOC)主催の大会で6試合を戦ったのは、銅メダルを獲得した68年のメキシコ五輪と、準優勝となった99年のワールドユースの2大会しかなかった。

 まずは初戦のスペインといかに戦うかがポイントだった。
 スペインには、キーパーにダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)、ディフェンスのジョルディ・アルバ(バルセロナ)というA代表経験者がおり、オーバーエージ枠として、ハビ・マルチネス(当時アスレティック・ビルバオ)、ファン・マタ(チェルシー)らが加わっていた。A代表は2010年W杯南アフリカ大会、五輪前の欧州選手権で優勝しており、ロンドン五輪でも優勝候補の筆頭と目されていた。

 里内はスペインの監督の決勝に向けて調子を上げていくという趣旨のコメントが掲載された記事を見つけ、つけいる隙があると感じていた。

 選手のピークをどこに持っていくかは意見の分かれるところである。たとえばブラジル代表は毎回W杯で決勝トーナメント終盤にピークを持っていくように調節していると言われている。

 2006年W杯ドイツ大会で日本代表はグループリーグで敗退した。その敗因として決勝トーナメントに合わせてコンディションをつくっていたという意の記事を目にした時、里内は全く違うと憤った。里内は当時の代表フィジカルコーチである。日本代表にはそんな余裕はなかったのだ。当時の方針は初戦に向けて選手のコンディションを仕上げる。それはロンドン五輪でも変わらなかった。

「1試合目から潰すぞ、トラトラトラ」
 里内はスタッフ合宿で気勢を上げた。