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「汚染水システム崩壊」なのに東電は黒字…小泉元首相が喝「脱原発で自民党をぶっ壊す!」
顧問を務める「国際公共政策研究センター」に足を運ぶ小泉元首相。本誌の呼びかけに応えず足早に去った〔PHOTO〕片野茂樹

原発推進か脱原発か―。現役首相と元首相の〝ガチンコ対決〟が本格化している。講演会で「脱原発」を訴え続ける小泉純一郎元首相は、10月29日、東京・日本橋で、社民党の吉田忠智党首と45分にわたり「反原発対談」を行った。9月にはみんなの党の渡辺喜美代表とも意見交換をしている。社民党の吉田党首自身「まさかと思った」と話したというが、いまの小泉氏は「脱原発」であれば党派は問わないのだ。反原発勢力の結集軸となりつつある。

「小沢一郎、菅直人、それに最近党内派閥の立ち上げを表明した民主党の細野豪志議員も小泉氏との面会を希望しているようです。さらには日本維新の会の橋下徹共同代表も、『脱原発でなら小泉氏と共闘できる』と接近を試みています」(全国紙政治部記者)

これに対して、当初は沈黙を保っていた安倍晋三首相も、とうとう反撃に転じた。10月24日には報道番組のインタビューに応え、「小泉さんは脱原発を主張するが、現実的ではない」と名指しで批判し、「小泉さんは無責任」とまで切り捨てている。さらには国会会期中にもかかわらず、日本の原発購入を決定したトルコをわざわざ訪問した。小泉氏の挑戦を、安倍首相は真っ向から受けて立ったのである。

かつては「師弟関係」にあった二人。その違いが明確に出たのは今年の9月頃だ、と自民党ベテラン秘書は証言する。

「8月中旬、小泉氏はドイツとフィンランドの核関連施設を視察しました。帰国後、小泉氏は親しい知人と会食したのですが、そこで『脱原発は素晴らしいと思いますが、安倍さんに弓をひくことになりませんか』と問われ、『うーん、安倍君はいま、海外への原発の売り込みに走ってしまっているからね……』とはっきりと顔に失望の色を浮かべていたというのです。以来、公の場でも安倍批判を繰り返すようになった。

作業員が撮った汚染水貯蔵タンク群の画像。中央の発電機により、ポンプからくみ上げられた雨水がホースで輸送される

安倍さんはまだ小泉さんとパイプがある石破(茂)幹事長に、『自民党としては、小泉さんの脱原発発言を歓迎できない。今後はそうした発言を控えてくれるようなんとか頼んでみてください』と指示したと聞きます。ところが石破さんがそのことを伝えると、なんと小泉さんは『俺はもう政治家じゃないんだ。一民間人の発言にいちいち文句をつけるんじゃないよ!』と石破さんを一喝したそうです。もはや両者の関係修復は困難でしょう」

小泉氏と安倍首相の対立は、福島第一原発の現状認識の違いから生まれている。特に汚染水問題のとらえ方の違いは明確で、安倍首相が「汚染水はコントロールされている」と発言したのに対し、小泉氏は講演で「いまだに汚染水は漏れ続けている」と指摘している。

現首相と元首相では、立場も違えば、入ってくる情報もまったく異なる。安倍首相の周辺には経済産業省出身の秘書官や東電幹部がいるため、「汚染水漏れは問題だが、漏出している放射線量は人体に影響があるレベルではない」という数値や報告があがっている。一方の小泉氏は、民間人の視点からこの問題をとらえ「たとえ微量の放射性物質でも、潜在的にどんな危険があるかわからない。10万年以上にわたって放射性物質をコントロールできるはずがない」と認識している。

東電が10月16日に作成した、道路陥没の調査資料。「G3」と呼ばれるタンク群の間近で発生したことが分かる

東電黒字のカラクリ

こうした「安倍的見方」と「小泉的見方」の違いは、福島第一原発の作業現場にも反映している。

「東京電力の現状認識は甘すぎます。今のままでは、増えるばかりの汚染水に手の打ちようがない。想定外の事態が頻発しているのに、要求されるのは場当たり的な対応ばかり。現場は大混乱です」

こう語るのは福島第一原発で働く、40代のベテラン作業員A氏である。

10月15日の夜10時頃。作業を終え原発内の事務所に戻ったA氏は、どんどん大きくなっていくゴォーという地鳴りのような音に胸騒ぎを覚えた。すぐに防護服の上にカッパを着て事務所を出ると、外はこれまでに経験したことのないような豪雨。同僚と汚染水貯蔵タンクへ向かうと、堰から汚れた雨水が勢いよく溢れ出ていたという。

「これは大変なことになったぞ」

A氏は事務所に戻り、上司に状況を報告する。だが、その反応には危機感はまるでなかった。

「どうしようもないだろう。東電の想定以上の雨が降っているんだから」

巨大台風26号が日本列島に接近したこの日、東電が想定した雨量は一日に30mmほど。だが実際には100mmを超える豪雨が、福島原発を襲っていたのだ。高さ30cmほどの堰では、とても防ぎきれない。東電には排水弁を開けて排水し、容量の少ないポンプで雨水をくみ出すくらいしか、有効な対策はないのだ。雨が治まる明け方まで、汚れた水は大量に堰の外へ流出し続けた。

台風が通過した翌16日の朝礼で、30代の作業員B氏は、協力企業の所長の報告を聞いて背筋を凍らせた。所長は淡々とこう話したという。

「台風の影響で、G3タンクエリア脇の道路が陥没したということです」

東電はこの事故について「人や施設への被害がなかったから」との理由で、当初いっさい公表しなかった。定例記者会見で事実を明らかにしたのは、発生から6日後の10月21日である。

「東電の対応は、いつもこうです。危機感がまったくない。汚染水の対応も、すべてが後手後手です」(B氏)

堰からの漏水は、少なくとも11ヵ所。しかし4000tを収納できる大型仮設タンクまで輸送するポンプの能力が不足しているので、東電は、今年4月に汚染水漏れ事故を起こした、シートを3枚重ねただけの地下貯水槽を再使用することを決定。地下に溜まった雨水も、処理しきれないため排出し始めた。

東電は汚染水問題でも、経費節減を最優先にしているように見える。昨年9月に8・46%上げた家庭向けの料金や経費節減などにより、'13年9月の中間連結決算で、震災後初めて1200億円ほどの黒字を確保したという。

その根底には「多少汚染水が漏れても、放射線量はもはや大したことがない」という安倍的見方があるのだろう。

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