社長の風景

弊社の自慢は技術力。カレーや親子丼など、研究陣は何でもフリーズドライにしてしまいます。

2013年11月07日(木)
週刊現代
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フリーズドライ技術を中心に、乾燥食品に特化した企業を取材した。社員数700名超、広島県福山市に本拠を置く天野実業だ。昭和中期、人気食材だったカラメルの粉末化に日本で初めて成功し、以降、即席めんのスープや具をつくることで成長してきた。'08年からアサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)傘下に入り、現在、フリーズドライのブロックタイプみそ汁でシェアトップを誇る。アサヒ出身の兼光宏美社長(60歳)に聞いた。


弊社の自慢は技術力。カレーや親子丼など、研究陣は何でもフリーズドライにしてしまいます。かねみつ・ひろみ/'53年、広島県生まれ。'76年に岐阜大学工学部機械工学科を卒業。'89年にアサヒビール入社。生産企画部長などを経て、'04年にアサヒビール理事、'06年にアサヒグループのベビーフードメーカー・和光堂に出向、'09年同社常務取締役。'12年3月に天野実業へ転籍。専務取締役を経て'13年3月より現職
※天野実業のホームページはこちら

昇華

フリーズドライの原理は簡単です。物質には、固体、液体、気体の3つの状態があります。水分も、0℃以下は氷、0℃から100℃は水、それ以上は水蒸気と、温度によって姿を変えますよね。

ところが、富士山頂だと水が87℃で沸騰するように、気圧が低い場所では物質が液体でいられる温度帯が狭くなる。ほぼ真空にまで減圧した場所だと、水は固体の次に気体になる。これを「昇華」と言います。だから、たとえばエビを凍らせ、ほぼ真空状態で常温に戻すと、凍っていた水分が液体にならずに気化し、エビから水分が失われるのです。

技術力

フリーズドライの利点は、乾燥させるときに過剰な熱を加えないから、食品の風味が変化しにくいこと。食品それぞれに最適な凍結や乾燥の条件があって、ここが弊社の技術力です。

ロジック

私はアサヒビールに入社する前、北海道で個人の設計事務所を開設し、機械やプラントの図面を描いていました。個人で設計事務所を立ち上げられたのは、大学時代、設計事務所でアルバイトをし、社長に「図面を描かせてください」と頼み込んで経験を積んだからです。その時勉強になったのは・・・・・・たいてい、まず全体図を描き、それをバラして細部の図面を描くのですが、そこで終えてはダメ、ということ。細部を組み立てると全体図になるか、逆の工程も試してみなければいけない。

内定者と 社員と飲むのが一番の楽しみだという兼光氏。写真は、本社会議室で来年4月入社予定の若者たちとお酒を酌み交わしているところ

組織も同じで、中期計画を立てたら、部単位の目標など細部に落とす。これだけで終えず、その部で本当に売り上げを積み上げられるか考え、全体で中期計画通りの結果が出せるか計算してみる必要がある。その往復がなければロジックとは言えない。

役得

35歳の時、アサヒビールが工場を管理するエンジニアを募集していることを知り、応募しました。入社後6年は工場勤務。いろんな仕事をしましたよ。

ビールは極力、酸化させたくない。だから缶に詰めるとき、缶のフタと液面の間の空気を炭酸ガスに置き換えるということをしています。炭酸ガスをどのタイミングで缶にプシュッと吹き込むのが一番いいか・・・・・・といった改善をしていました。仕事も楽しかったのですが、毎日、ビールを試飲できるのが幸せでなりませんでしたね(笑)。

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