サッカー
二宮寿朗「好ゲームの裏に、好ジャッジあり」

 審判のジャッジがクローズアップされるときは、おおよそ「誤審」のケースが多い。最近では、10月18日に行われたブンデスリーガのレバークーゼン対ホッフェンハイム戦でシュートがゴールの外側からネットの穴を通って中に入り、それが得点として認められるというとんでもない出来事が起こった。

 こうした悪いジャッジは否応なく目立つ。逆にいいジャッジは目立たないし、それがメディアに取り上げられることはほとんどない。審判が正しいジャッジをするのは至極当たり前だととらえられているからだ。だが、コラムに記しておきたいと思えるほど、いいジャッジに出合った。浦和レッズと柏レイソルが対戦した11月2日のヤマザキナビスコカップ決勝。柏の1点リードで迎えた後半終了間際、浦和のゴールがオフサイドと判定された場面だ。

線審が主審に送ったメッセージ

 浦和が自陣からのカウンターで攻め上がり、ペナルティーエリア内で原口元気がポストプレーでつなげようとしたところを柏の守備陣がクリアを試みた。ところが、そのボールがすぐ側にいた浦和の選手に当たり、こぼれた球をオフサイドポジションにいた興梠慎三が押し込んだのだ。このとき、線審はオフサイドを告げるべく、旗を上げていなかった。そのため浦和は同点ゴールが認められたと思い込んだわけだが、線審はオフサイドライン上から動いていなかった。主審もゴールと認めたジェスチャーをしていなかった。

 この場面、線審は興梠がオフサイドポジションにいるのは把握できていた。つまり、クリアボールが柏の選手に当たったてこぼれたのか、それとも浦和の選手だったのかが線審には判断できなかったということだ。柏の選手に当たっていればゴールが認められ、逆に浦和の選手に当たっていればオフサイドということになる。

 オフサイドかどうか判別が難しい場合、線審は原則として旗を上げるのが望ましいとも聞く。その意味で旗が上がらなかった時点で、見ているほうとすれば浦和のゴールが決まったと判断してもおかしくはない。しかし、もし柏の選手に当たっていたとして、確認できないまま旗を上げてしまえば、それこそ場が紛糾していた怖れもある。

 今回、様々な状況を頭に描いたであろう線審は旗を上げず、さらに動かずという姿勢を見せたことで「私の位置からは判断がつかない」とのメッセージを主審に送ったのだ。PA手前の位置から見ていた主審は、誰がボールに当たったかを確認しやすかった。主審も線審のメッセージを汲み取ったうえで、判断を下そうとした。とはいえ、筆者自身、観客目線に立てば、主審が「今すぐに線審と確認する」というジェスチャーを両チームの選手に示し、すぐに確認作業に入っていれば、もっとスムーズに周りを納得させられたのではないかとも思った。